ERな人 Vol.2 THALIA STORE OWNER 鎗田 美砂子

ERなひと vol.2

 photo / Kazuharu Igarashi text / Koji Toyoda

 

1906年創業のアメリカンワークブランド〈SMITH'S AMERICAN〉(以下スミス) 。1970年代にメイド・イン・USA物の草分けとして日本流通するようになって半世紀。その魅力は決してリアルワーカーのためだけではない。様々な分野のエキスパートたちにその良さを大いに語ってもらった。

 

 タリア色の染まった〈スミス〉。

  

「スミスはワークウェアじゃない?」

白いカバーオールの下には、〈ジル・サンダー〉のチェッカーフラッグ柄のニットカットソー。肩からは英国製のフィッシャーマンセーターをさらりと掛ける。『タリア ストア』のオーナー、鎗田美砂子さんの着こなしは、とても自由だ。ジャンルを決めず、己の直感に従うままに買い付けたというお店のアイテムのように、そもそも彼女の中には“スミス=ワークウェア”という方程式がないのかもしれない。

 

「毎回アメリカに買い付けに行っていますが、“アメリカ製じゃないと嫌だ”といったこだわりはないんです。どちらかというと手仕事の温もりを感じるものや個性的なファブリックを使った“違和感”あるものに惹かれる。だから、主人と一緒に営む『タリアストア』は、オープン当初からいつだってジャンルレス。ウズベキスタンの衣装や‘70年代のヴィンテージのウエスタンシャツもあれば、名もなき作家がハンドメイドで拵えた器や花瓶もあります。古着や雑貨の垣根も越えて、暮らしの中で女性を美しく飾ってくれるものを置くようにしていますね。店名も実は、ギリシア神話に登場する女神タリアから拝借していまして(笑)」

「スミスってファッションなのかも」

そんな鎗田さんにとって、〈スミス〉のワークウェアは新しい“違和感”。

「実は恥ずかしながら、初めての〈スミス〉なんです。歴史も古いですが、私のファッションにおいては、ブルックリンからやってきた新しい“スパイス”のようなものなんです。だから、完全無欠のワークウェアですが、「スミス=ワークウェア」という方程式はあんまりなくて。大好きなPVCやメタリック、ラメを使った古着、民族衣装のように“タリア”の味を濃くしてくれるファッションだと思っています」

そのファッションとして妙味は、ワークウェア本来のディテールにも感じるという。

「私には“道具”としての機能性も、デコラティブなディテールに映るんです。このハンティング用アノラックの袖に備わったアジャスターも、カバーオールの白地に鮮やかに縫われたブルーステッチも。労働者のために作られた洋服のはずなのに、妙な華やかさを感じるんですよ。大袈裟に言えば、モード服のような。それに意外と生地感もしなやかで、女性が着られる安心感もある。メンズだけのものにしておくのはもったいないなぁと」

 

「オーバーオールとウズベキスタンのガウン」

「白いオーバーオールは、無駄なディテールを削ぎ落としたプレーンな見た目。インナーにサテンのウエスタンシャツだけだと心許ないので、上からウズベキスタンのガウンを羽織り、民族衣装を絡めて、『タリアストア』のスタイルに寄せた感じです」

アジャスターとプリントドレス」

「腕のアジャスターも面構えも、どこかサイバーパンク的なハンティングアノラック。武骨で力強い印象なので、‘70年代のプリントドレスに、高いヒールのレースアップブーツで軽さを持たせて、女性的に」

「無垢のキャンバスとメタリックパンツ」

「白地のカバーオールは、メンズのLサイズ。ダブっとしたサイズ感と無垢な存在感は、メタリック素材のパンツやチェッカーフラッグ柄のタートルカットソーなど、異素材のものと組み合わせるとクリーンな印象に」。

初めての“スパイス”の味見を繰り替えしながら、『タリア ストア』の世界に引き込むように、〈スミス〉のオーバーオールにハンティングアノラック、カバーオールをコーディネイト。

「どう調理すればおいしくなるのだろう? とあれこれ思考を巡らせるのが楽しいですよね。違和感と違和感をぶつけ合って、ピタリとハマったときにファッションの楽しさがあるような気がします。だから、私からのアドバイスは恐れず、いろんなテイストの洋服と試すこと。〈スミス〉は、たぶん女性にはあまり馴染みのない洋服かもしれないけど、こう着れば、いいんだよ。ってことが、このコーディネイトを見て少しでも感じてもらえたら」

 

大衆酒場をイメージしたと言うコの字カウンターの中から、謙遜しながら彼女ははにかんだ。

鎗田美砂子

1985年、埼玉県生まれ。『シップス』でキャリアをスタート。様々なお店を経て、2017年、夫と一緒に『タリア ストア』をスタート。買い付けはアメリカメインで行う。

 

『タリアストア』

提灯やコの字カウンターなど、夫婦がこよなく愛する大衆酒場をイメージした店内には、古着にアクセサリー、器や花器にオブジェなど、時代もジャンルも越えた“タリア”印の商品が並ぶ。

○東京都世田谷区世田谷1-21-9 

tel03・6874・1448  13:00〜19:00 不定休

 

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