ERな人 VOL.1 L'ECHOPPE コンセプター 金子恵治

 

ERな人 Vol.1 L'ECHOPPE COCEPTER  金子恵治

photo / Kazuharu Igarashi text / Koji Toyoda

 

1906年創業のアメリカンワークブランド〈スミス〉。1960年代にメイド・イン・USA物として日本に流通するようになって半世紀。その魅力は決してリアルワーカーのためだけではない。いろんな分野のエキスパートたちにその良さを大いに語ってもらった。

 

 <スミス>のペインターパンツは、

レギュラーデニムに似た存在。

 

「ずーっと<スミス>はやりたかったんです」。そう語る、金子惠治さんがディレションし、自らバイイングも手がける『レショップ 渋谷店』には、<スミス>のペインターパンツが、ヒッコリー、デニム、ホワイトの3色が、いつでも買えるレギュラー品として置いてある。

 

 

「10代で受けたスミスの洗礼」

 

「僕にとって<スミス>は憧れ。メイド・イン・USAの洗礼を受けた10代の頃、アメ横にペインターパンツをよく買いに行きましたね。と言うのは、その頃、僕の周りにいたオシャレな先輩たちは、アメリカ物の定番品はしっかりと踏まえた上で、<スミス>のペインターパンツを必ず一本持っていたんです。ワークパンツと言えば、<ディッキーズ>や<リー>のように男らしい極太シルエットを想像すると思いますが、<スミス>はちょっと小洒落たテーパードシルエットなんです。しかも、当時のヴィンテージを手に取ると、ステッチがブルーやレッドだったり。ベルトループがX型になっていたり。ブルックリン生まれだけあって、アメリカ西海岸では生まれそうにもない、ファッショナブルな雰囲気が格好良かったんですよね。 ‘80〜’90年代のヴィンテージの商標タグを“スミスジーンズ”とも書かれているし、もしかしたら作り手たちはファッションウェアを作り出そうとしていたのかもしれませんね。だから、店を始めるときから<スミス>のペインターパンツは、常にレギュラー枠として考えていたんですよ」

 そんな金子さんの想いが伝わったのか、縁あって倉庫に眠っていたメイド・イン・USAのセミデッドストックを分けてもらうことに。『レショップ』の二号店となる渋谷店オープンのタイミングで、店頭に並べるようになった。

 

「白Tや白シャツのように消耗品といったスタンスで置いています。ガシガシ履きつぶして、破れたらすぐに買い足せるように。でも、何も考えずに履くのでは、アメリカのホームセンターにいるリアルワーカーたちと変わらなくなってしまう(笑)。<スミス>の良さは、ハズしとしてファッションに取り入れたときに初めて輝くものなんじゃないかと思います」

「品よくジャストサイズをセレクト」

「例えば、このヒッコリー柄は、あえてジャストサイズを選んで、ダンガリーシャツはタックイン。ヨーロッパ物のサスペンダーを合わせ、肩にハイゲージニットを掛けてみたり。品の良きアイテムと組み合わせることで、男臭いヒッコリー柄が、上品なストライプのようにも見えてくる」

 

「あえてのビッグサイズをチョイス」

「デニムの場合は、わざとオーバーサイズをチョイスして、ラフにグルグルッとロールアップ。スエードのデザートブーツや長めの襟にモードな雰囲気を彷彿とさせるハーフジップニットなどを合わせると、全体のバランスがうまく取りやすいと思います」

「ノーカラーシャツで軽く」

「ホワイトのペインターパンツは、他の2色に比べて品があるので、グレーのロンTをタックインするくらいがちょうどいい。その上からノーカラーのロングシャツをさらりと羽織るくらいが、軽さを持たせたスタイリングが似合う気がします」

 

 

 「工場も動き始めたし、いつかは別注も。」

 

と、物を見るなり、独自の理論を携えて、バンバンとスタイリングを決めていく金子さん。

「どんな服もそうですが、洋服のキャラクターを見て、サイズや合わせる靴やシャツなどのバランスを考えるのが一番重要なんだと思います。ある程度、人物像を決めて、思い込みのストーリーを立てながら、あれやこれやと組んでいく作業が面白いんです。“無骨”とか“土臭い”とか。ワークウェアならではの凝り固まった偏見をとかく持ちがちですが<スミス>のペインターパンツは、実はいろんな姿に変幻自在できるポテンシャルがあると思うんです。だから、どんなに時代もファッションも変わろうとも、僕のスタンダードであり続けたんじゃないかと。コロナ禍でストップしていたアメリカの工場も動き始めたみたいですし、次は古き良き時代のカラーステッチやX型のベルトループを取り入れた一本を別注で作ってみたいですね。今の若い子に、<スミス>のファッショナブルな部分をもっと伝えていきたいなぁと思います」

金子恵治さん

セレクトショップ『エディフィス』にてバイヤーを担当した後に、2015年に『レショップ』を立ち上げる。

 

 

レショップ 渋谷店

『レショップ』や金子さんが考えるスタンダードを定番品として揃えるニューショップ。

○東京都渋谷区神宮前6-20-10 MIYASHITA PARK SOUTH 2F 11:00

 

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