ERな人 VOL.48 中井 侃矢 (STAYFLOWERオーナー)

ERな人 VOL.48 中井 侃矢 (STAYFLOWERオーナー)

photo, text, edit by NAOKI KUZE

 

 1906年に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で様々な役割を持ち活躍する”ERな人”達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。

 

京王線・代田橋駅から徒歩10分ほど歩いた住宅街の路地を進んだ先にある”KOYA STAYFLOWER”

エントランスに描かれているアート。 元々は民家だったがリノベーションしている。すりガラスはそのまま活かして使用しているそう。

 

ー花屋になろうと思ったきっかけを教えてください。

中井 侃矢 (以下中井): 僕は今29歳なんですけど、大学を卒業して新卒で就職するタイミングで地元である和歌山から上京してサラリーマンになったんです。ずっと地元で育ってきたので満員電車に乗ったこともなかったのに就職していきなりギュウギュウの満員電車に揺られて通勤する日々を過ごしていたんですよ。でも一年ぐらいでその生活が辛くなってしまって「うわ~ちょっともう限界でヤバいかも」って思うようになってしまったんです。それで今自分がやっている仕事は無機質だなって感じていたので、安直ではあるんですけど「無機質の反対の有機質な仕事ってなんやろう?」って考え始めたんですよね。それで色々考えた結果「花屋ってカッコいいな」って思って花屋さんに勤めさせてもらったのがきっかけですね。

ー有機質なモノの中から”花”に行き着いたのはなぜですか?

中井: サラリーマン時代に花をもらう機会があって、当時は花のことは全然よくわかっていなかったんですけど、わからないなりにその花を家で生けたみたらいつもの家の景色が変わったんですよね。花のお陰ですごく良い空間になった実感があって「花ってめちゃくちゃ良いな」って思わせてくれたことが一つですね。もう一つがGINZA SIXの蔦屋書店で日本人の植物アーティストの本を読んだ時に、おしゃれでタトゥーがいっぱい入っていて、花や植物を扱う人でこんなかっこいいスタイルの人もいるんだって知った時に刺激を受けたこともきっかけですね。それに振り返ってみると、小さい頃から手を動かして物作りすることも好きだったし、カラフルなモノが好きだっ たので花のことが好きになる要素は元々持っていたのかなって思います。今に繋がっているなと。

 ーSTAYFLOWERはどのように活動を始められたんですか?

中井: 配送会社が花を配送出来ることを知っていたので初めはオンラインストアで販売をするスタ イルで細々とやっていました。あとは知り合いのお店でPOP UPをさせてもらったりイベントに出店したりっていう動きを2年ぐらいやっていましたね。

ー本日お邪魔させていただいた”KOYA STAYFLOWER”初めてのリアル店舗ですが、元々古民家をリノベーションされてお店を作られたようですね。その経緯を教えてください。

中井: 元々”KOYA STAYFLOWER”の近くのアパートに住んでいたんです。そのアパートの一室で花を保管し、オンラインで購入していただいたお客様に発送していたんですけど、とある事件が起こったんです。アパートで夜眠っていたら、外で「ガシャガシャン!」って大きな物音がしたんで すよ。ちょうど次の日がイベント出店だったのでガラスの花器などを家の前に置いていたことも あって「うわ~誰かぶつけて割っちゃったかな~?」って家の外に出たら見知らぬおじさんが家の前に血だらけで倒れてたんです。状況を確認すると、犬の散歩をしていたら同じく犬の散歩をしていた人とすれ違った時に犬同士が興奮して激しくリードを引っ張っちゃったみたいで、その反動でおじさんが体勢を崩してしまって僕の家のアパートのブロッック屏に頭をぶつけたことがきっかけで血まみれになってしまってたみたいで()。それで僕がすぐ救急車を呼んでおじさんも事なきを得たんです。それで次の日におじさんと会った時にお互いの仕事の話なったんですけどおじさんはファッションスタイリストをされていることがわかって、夜の出来事がきっかけでとても仲良くなったんです。でも、その後僕が代田橋から引越しをすることになったことをおじさんに伝えたらおじさんが「寂しいやん!」って言ってくれて、その三日後ぐらいに「代田橋で良い物件見つけてきたで!庭もあるしここに決めて店やったらいいやん!」ってゴリ押しされたんです()。でも古民家で数年間誰も住んでいなかったみたいだったんで、もうそれはそれはボロボロで大変な状態の物件でした。どうしようか迷ったんですけど、クラウドファウンディングで資金を集めればそんなにリスクも無いからやってみようかなって思うようになってリアル店舗に挑戦することにしたんです。そのスタイリストのおじさんが血まみれで僕の家の前で倒れてなかったら今でもオンラインストアしかやっていなかったと思うので()、本当に奇跡的な出会いだったと思います。しかも蓋を開けてみると、このお店の物件の大家さんも元々STAYFLOWERのお客様の旦那様だったという運命を感じるような縁が重なってたんですよ。

ーオンラインでの運営とリアル店舗の運営では仕事の面白さも変わってくると思いますがどういった違いを感じましたか?

中井: オンラインストアだと、花束とか包み紙なんかが自分のクリエイティブとして目に付きやすいモノだと思うんですけど、リアル店舗になると色々な要素が必要になることを肌で感じました。外観・内観・サービス・僕たちの人となりも含めてしっかり見せないとダメなのところが大変だし面白いところだと思います。初めは花を置くだけで大丈夫かなって思ってたんですけど、この”KOYA STAYFLOWER”は大通りからも離れているので、来店していただいた方に満足してもらえる空間を作りつづけるのは手を加えることも多くて大変ですけどやりがいもあって楽しいです ね。

 

店内にはセレクトされた花器のほか、ネイルチップ、オリジナルウェアまでSTAYFLOWERの個性が詰まったラインナップ。

 

ー2店舗目となるお店を中目黒にもオープンされましたがこちらはなぜ中目黒だったんですか?

中井: 代田橋のお店って住宅街にのど真ん中だし、代田橋駅からも10分ぐらい歩くのでアクセスが 良いかと言われるとそうでもない立地ですし、知り合いにも「もうちょっと近かったらお店に行けるのにな~」って一万回ぐらい言われてるので「じゃあみんなアクセスしやすいところにもう1店舗出してみるか」って感じで見つかった物件が”STAYFLOWER NAKAMEGURO”なんですよね。

 

ーSTAYFLOWERを運営する上で大事にされていることはなんですか?

中井: 一番大事にしているのは、今STAYFLOWERのメンバーは僕を含めて5人いるんですけど、フィ ジカル面でもメンタル面でも両方気持ちよく幸せに働ける環境作りですね。花屋って多忙・薄 給・長時間労働みたいなネガティブな側面がどうしても生まれやすい職業だったんですけど、ずっとそのままだとこの花屋業界が衰退していってしまうので、僕たち若い世代が協力して効率よく動くことで、休める時は休めるように出来るよう業界の環境をポジティブに変えていければ良いなと思っています。あとは花屋の外でも中でも、少しずつ人として成長できるように意識を持って行動することは抽象的ではありますけど心がけています。

 

中井さんがイベント出店をしている頃からSTAYFLOWERのメンバーとして活躍するあやめさん。

 

ー将来挑戦してみたいことを教えてください。

中井: 海外にお店を出してみたいですね。全然まだどの国が良いとかは無いんですけど、たとえばミラノとかメルボルンとかにお店を構えたとして、でもショップカードを見たら本店は日本の代田橋って記載されてて海外の人からすると「どこやね~ん!」みたいな感じが良いですね()。あとはめちゃくちゃ個人的な好みの話になっちゃうんですけど、僕はウィルスミスが大好きで、ウィルスミスの家の花瓶に花を生けてる時にウィルスミスが帰ってきて言葉を交わすみたいなことをやってみたいです()!

 @yamepouty

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中井 侃矢 @stayflower2019 @kanyanakai

STAYFLOWERオーナー

大好きな音楽、お洋服、友人との一時を楽しむように、 気軽に花を生活に取り入れられたら。暮らしはもっと豊かになると思います。 新しいスニーカーをおろした日、美容室やネイルに行った後のような、 そんな、何気ない日々のちょっとした高揚感をお届けできればと思っています。

STAYFLOWER ONLINE STORE :  https://stayflower2019.com

 

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