ERな人 VOL.53 村上 竜一 (利口. 店主 / 納豆マガジン編集長)

ERな人 VOL.53 村上 竜一 (利口. 店主 / 納豆マガジン編集長)

photo, text, edit by NAOKI KUZE

 

 1906年に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で様々な役割を持ち活躍する”ERな人”達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。

 

ー仕事面で様々な顔をお持ちですが現在どのような活動をされていらっしゃいますか?

村上 竜一 (以下村上): 今はこの利口.”というショップの運営と納豆活動がメインです。特にいま力を入れているのは、”N-1グランプリ(ネバワングランプリ)”という納豆の 食べ比べイベントですね。審査員は参加していただくお客様で、何十種類もの納豆を食べて一番を決めていただくという内容となっています。毎月いま予選を行なっていて、納豆の日(710日)の近く7日には本戦があり、その予選1位が大集結します!京都の「金戒光明寺」という立派なお寺を借りて大体的に開催するので、かなり楽しみではあります。その他は僕がデザインしている納豆アパレルネバネバビーンでイベント出店したり、納豆のセレクト販売も行ったりもします。あとは納豆に特化した雑誌「納豆マガジン」の編集長としても活動しています。 前職が関西のファッション雑誌「カジカジ」だったので、フリーで雑誌の編集・ライターのお仕事、モデルもたまにやらせてもらっています。

 

 

ー本当に精力的に活動をされていらっしゃいますね。少しルーツについて教えてください。ここまで納豆にハマったきっかけとは?

村上: 5,6年前なのでまだ「カジカジ」編集者時代に遡るのですが、はじめは納豆っていうよりは納豆巻きが好きだったんです。コンビニでもよく買うし、寿司屋でもよく頼んでたんですけど、ふと納豆巻きってサブ的な立ち位置だなと思ったんです。こんなに美味しいのに寿司屋に納豆巻きをメインで食べに来る人っていないから、それをメインというか、日の目を浴びる機会があったら面白いなと思って、自主的に納豆巻きのイベントを企画したんです。当時編集の先輩が麻婆豆腐が好きでイベントをよく開催されていたことも影響してるんですけど、一緒にやったこともありました。でもその時はただ納豆巻きが好きなだけで、納豆の種類や銘柄に詳しいわけではなかったです。ファッションは職業柄大好きだったので、ちょうどその頃に納豆×アパレルを掛け合わせたブランドネバネバビーンのアイデアが降ってきたタイミングでもありましたね。

 

 

利口.には納豆アパレルネバネバビーンのアパレルがフルラインナップで展開されている。

 

 

ーそこからどのようにして、納豆がビジネスにつながるような活動に発展していったんですか?

村上: イベントをもっとたくさん開催していきたいと思っていた矢先、コロナ禍に突入してしまって全然できなくなってしまったんですよ。逆にそれがきっかけで、インスタグラムで納豆のレビューを投稿しようと決めました! バズったりしたわけではないんですけど周りからは「面白いことやってるね」って言われるようになり始めたんです。その矢先に「カジカジ」の廃刊も決まっちゃったので、転職するにしても、一から自分で始めるにしても、何か形にするしかないと思ってZINEを作ろうと思いはじめました。運がホントに良かったのですが、友人が出版社を株式化するタイミングで、「本出さない?」と声をかけてもらって。「納豆マガジン」の発行が決まりました。そこから全国の書店にも取り扱いが決まって、書店や百貨店、大手セレクトショップ「ジャーナルスタンダード」さんともコラボがあったり、納豆活動が本格化することになりました。今では毎月メーカーを変えてお届けする、納豆の定期便もやっていたりしています!

 

村上さんが編集長として発行している納豆マガジンも店頭に並んでいる。

納豆マガジンの横には京都清水焼の納豆皿も。通常の納豆パックよりも一回り大きいため思う存分納豆をかき混ざることが可能。
 
納豆定期便と併せて届けている粘粘便。毎号テーマが変わる。

 

ー納豆の一連の流れからこの利口.”というお店は納豆のカルチャーだけではなく古着や雑貨など様々な物を取り扱われていますよね。どのような経緯でこのショップをオープンすることになったんですか?

村上: 納豆の活動が本格するようになって、ポップアップに毎週のように呼ばれるようになったんですけど、イベントに参加するたびにお客様から「お店はないんですか?」と言われることが増えていったんですよね。確かに拠点があればよりお客様と密な関係が生まれるかもと思ったのが1番の理由ですね。あとはイベント出店だと冷蔵庫が用意できなくて、納豆自体の販売が出来ないことも多くて。納豆を売らずにアパレルしか販売が出来ない現場があると少し歯痒い感じがありました。そこから物件を探そうと思いはじめました。元々は神戸に住んでいたんですけど、彼女が京都だったことや、オリジナル納豆でコラボでしている藤原食品も京都だったので拠点を思い切って変えようと思いました。ラッキーなことにすぐにこの物件と出会うことが出来たので、半年も経たずにオープンまで漕ぎ着けることができました。

京都鞍馬口駅近くに拠点を構える納豆メーカー藤原食品の京納豆

藤原食品とコラボレーションしたTシャツも多数展開。

 

ー店名の利口.”の由来は?

村上: 僕がセレクトしてるアイテムを洗い出した時に、古着はシャツとかカッチリしたものが好みだったり、大学時代にプロダクトデザインを専攻していたこともあり、プロダクトアイテムを店に並べるのも面白そうだなと思ったり。メガネも大好きで昔から集めていたのでお店で置きたいなと思ったし、それらの共通のキーワードを探った時に知的なイメージを感じ取ったんですよね。それでその知的なイメージを表すワードとして利口.”って良いんじゃないかと思ったからなんです。

ー確かに利口.(RICOW)”って口に出した時の音の響きや、漢字表記でも英語表記でも収まりの良い気持ちよさがありますね。

村上: そうなんですよ。カメラメーカーで同じ音はあるんですけど()。お店で漢字表記でも英語表記でも利口.(RICOW)”って使っているところは他所に無かったし、漢字の持つ雰囲気も京都っぽくて良いかなと我ながら気に入ってます。

 

 

ー納豆由来の店名にはされなかったんですね()

村上: 初めは納豆に振り切るつもりで考えていたんですけど、納豆以外の物も納豆と一緒に並べたかったし、アウトプットの内容も少し幅を持たせたネーミングの方があとあと活動しやすそうだなと思って敢えて店名に関しては納豆由来にはしませんでした。なので納豆を軸に活動をしてきて、その活動を見て知って来店してくれたお客様からは「思ってたより納豆の店じゃないんですね」って言われたり()。でも僕としては何屋かわからない感じというか、納豆屋でも古着屋でも雑貨屋でもなんでも良いと思っていて。来てくれたお客様に委ねて好きに楽しんでもらえたらなという気持ちが1番ですね。

取材中は営業前だったが、河原町五条という立地の良さから近隣ホテルに滞在する海外観光客の来店が多数あった。興味深そうに納豆アパレルの説明に耳を傾けていた。

 

ー村上さんは色々な活動をされていますが、働く時のスタイルで意識していることはあります

か?

村上: 今日は古着のスタッズが特徴的なジャージみたいな羽織がメインなんですけど、スタッズがちょっと納豆みたいじゃないですか()?今日穿いているペインターパンツのカラーもベージュでちょっと大豆っぽい色なんで納豆を意識したコーディネートに仕上がったと思います()SMITH'Sのこのペインターはワークパンツらしいゆとりもあるんですけどルーズ過ぎない上品さもあって気に入ってますね。お店の名前が利口.”なんで今後はもうちょっと僕自身のスタイリングもお利口さんに見えるようにカッチリしていこうかなと思ったりもしています。

 

 

利口.”として今後やっていきたいことはありますか?

村上: 毎月に一度はお店でPOP UPイベントは企画していきたいと思っています。そのタイミングで作家さんとコラボの商品企画とかも可能な限りは実現させたりしていきたいですし、この店自体も発信の場として機能させる動きをしていけたら良いかなと。あとはお店の運営がだいぶ慣れてきたので、良いリズムでお店の営業もしつつエディターとしても活動をすることが出来ているので、もっと人を巻き込んだ活動をしていきたいなと思っています。実は年内に編プロを作ろうと思っているんです。今までは納豆にまつわることで単独で動くことが多かったんですが、編プロとして新たに屋号を作って、自分以外のクリエイターとより密に関わることでもっと大きな広がりを持って活動が出来るんじゃないかなと。最近はお客さんやインターンの学生さんとも交流する機会があったんですけど、話していてとても面白いし可能性を感じるので、同世代のクリエイターに限らず若い人も巻き込んで活動の幅を広げていきたいですね。

 

取材時には陶磁器作家のanna teradaさんのPOP UPが行われていた。

 

 

 

 

村上 竜一 @mikaramura_natto @ricow_kyoto

利口. 店主 / 納豆マガジン編集長

1993年生まれ、京都在住。大学卒業後、関西のファッション誌『カジカジ』で編集者として勤務後、フリーランスに。「納豆マガジン」の発行を皮切りに、納豆ブランド『ネバネバビーン』や納豆イベントの企画を全国各地で開催。2023年には京都で古着屋や雑貨、納豆もセレクトする『利口.』をオープンさせる。

利口.ウェブストア https://ricowkyoto.stores.jp

 

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