ERな人 VOL. 83 柳沼 純一 (ビストロそのまんま店主)


ERな人 VOL. 83  柳沼 純一 (ビストロそのまんま店主)

photo, text, edit by NAOKI KUZE 

 1906年に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で様々な役割を持ち活躍する”ERな人達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。

上馬の交差点近くの環状七号線沿いに店舗も構える「ビストロそのまんま」。

 

 

ー料理に興味を持ったきっかけを教えてください。

柳沼 純一 (以下 柳沼): ちっちゃい頃にお母ちゃんの料理を手伝うことがあったんですけど、初めて一緒にホットケーキを作った時に、食材に触る楽しさを覚えて興味を持ち始めたのがきっかけですね。それに実はお父ちゃんが寿司職人なので元々の血筋というか、飲食経営をするお父ちゃんの背中をずっと見て育ってきたこともきっかけとしては大きいのかなと思っています。他にも幼い頃に「味いちもんめ」っていうドラマを家族で観ていた時にも強く興味を惹かれて料理人になることに憧れたりもしていましたね。

ーなるほど。では実際に料理人になるための行動を起こしたのはいつ頃ですか?

柳沼: 純粋に、やっぱお父ちゃんが寿司職人っていうのがあったんで、種類は違いますが僕も飲食に携わっていきたいって高校生の頃には考えていましたね。お父ちゃんの背中を見続けてきたので、卒業したら調理学校に行こうって。

ー逆に飲食以外の道は考えたりされなかったんですか?

柳沼: 実はお母ちゃんが美容師だったので、美容師っていうのも頭に過ったことはありましたが、将来のことを考えた時に1番胸が熱くなれたのが料理に関することだったので、幼い頃から憧れた料理人になるべく調理学校に進学しました。

 ー店主として運営されている「ビストロそのまんま」はカレーがメインメニューとしてラインナップされていますが、数ある料理の中でなぜカレーがメインだったのでしょうか?

柳沼: 前々職が六本木のダイニングバーで働いていて、僕はそこでお酒や料理を提供していたんですけど、中学からの同郷の友人で、この店のオーナーでもあるsmock Inc.の飛竜くんと数年前に話していた時に、飛竜くんが「いつかカレー屋をやりたい」って話してて。それで僕もその夢を一緒に追いたいなって思って、それで一刻も早くカレーについて学びたかったですし、現場経験のために忙しい店に身を置かなければならないと思って、日頃から通うぐらいファンだった三宿の老舗のカレー屋「喜楽亭」に直談判して弟子入りさせてもらったんです。そこから4年半修行させて頂きました。

ビーフカレーにグリル野菜トッピングとキンキンに冷えた生ビール。

 

4年半の修行を経て、いよいよ「ビストロそのまんま」をオープンされますが、とてもユニークな店名ですね。名前の由来は?

柳沼: 前にこの物件で洋食屋を営んでいたオーナーさんが人柄もすごくいい方で。お店も20年近く経営されていたそうなんですけど、店内は非常に綺麗に整理整頓されていたんです。設備面もちゃんと手入れをされていたので、物件を初めて見た時に、大切にお店を経営されてきたんだなっていうのがすごく伝わってきたんですよ。だから雰囲気もすごく良かったですし、お店の料理も何種類か食べさせて頂いたんですけど、その味もすごく良くて、長年地元の人に愛されてきたのがわかるんですよ。だから体力的に経営が難しくなってお店を閉じられるのが、僕たちも寂しく思ったんです。だから物件を引き継ぐ我々はカレー屋なんですけど、作り変えるというよりは、20年間オーナーの愛で育てられた空気感をそのまんま後世に残していきたいなって。だから内装も手を加えるところはもちろんありましたが、空気感は崩さず、今まで洋食屋に来られていた地元の方にも、変わらず愛され続けるお店で、そのまんまの形でカレー屋としてスタートしますよっていう意味から名付けたんです。あとはそのまんままんまにはご飯って意味もかけてあります。

ーメニューの中にある以前の洋食屋のメニューであるアンドレのオムレツもラインナップされているんですね。

柳沼: はい。カレーとはまた別におつまみで食べてもらえるようにアラカルトメニューとしてレシピや調理法を直々に教わってアンドレのオムレツを提供させて頂いています。味に関しても、前のお店の愛された味をそのまんま引き継いでいます。

 

絶妙な辛さとフルーティーな甘味がクセになるルーのカレーと、プリプリのエビとクリーミーなソースにトマトの酸味がアクセントのアンドレのオムレツの相性は抜群。ぜひ生ビールと一緒に流し込んで欲しいおすすめの逸品。

 

ーメインであるカレーもレギュラーメニュー以外にも期間限定でしか食べられないスペシャルなカレーも積極的に提供されているようですが、メニュー開発はいつもどのようにして考えていらっしゃるんですか?

柳沼: 日常的に頭の中で、これとカレーだったら合うかなっていうのを、考えちゃってるんですよ。あとは、季節の食材を取り入れて、これをどういう風にしたら、僕たちのカレーに落とし込めるかなっていうことを常に考えていますね。外食に行った時も、カレーとは違うジャンルだったとしても、「これはカレーに使えそうだな」っていうインスピレーションを得たりすることもありますね。味は大前提として大事にしてるんですけど、お客様のお腹を満たすという意味でボリュームもしっかり出せるかっていうこともメニュー開発では大事に考えています。

ーお店の営業をされている中で、嬉しいなと思う瞬間はどんな時ですか?

柳沼: お客様がカレーを食べた後に、帰り際に「美味しかったです。また来ます。」っていう声がほんとに多いんですよ。その「美味しかったです。」って一言が僕の中で1番嬉しいことなんです。あとは、直接僕に言わなくても、ちょっとテーブルの方とかで小声で「おいしいね。」っていう声が聞こえる時も、もうめちゃめちゃ嬉しいですね。そのまんまをやっていて1番嬉しいことはそこに尽きます!

ー営業をしている時のワークスタイルのこだわりを教えてください。

柳沼: コックコートにスラックス、足元はサンダルで軽快に動ける服装であることですね。厨房では油とかやっぱカレーとかすごく飛び散って汚れたりするんですけど、それもちょっと味が出て良い感じに育っていく感じが気に入ってるんです。だからワークウェアは昔から大好きなんです。今日着ているカバーオールもカレーで汚れたりするとめちゃくちゃカッコ良く育ちそうですよね。コーデュロイの畝が削れたりしていくとまたいい面になってくれるだろうからガシガシ汚して洗って育つのが楽しみです。

LES HALLES COVERALL / JADE

ー今後の展望を教えてください。

柳沼: まだオープンして2年弱なので、まずはしっかりとお店の土台を固めつつ、お客様の美味しいという声をちゃんと絶やさず、もうずっと美味しいもの、いつ来ても味が変わらない、いつ来ても美味しいと思われるような料理を徹底的に作っていきたいですね。あとは流行り廃りに関係なく、街中華みたいな感じで、そのまんまが町カレーとして地元の方にずっと愛され続けるようなお店作りをこれからもしていきたいです。

 

柳沼 純一 @junichi_1211 @sonomanma_curry

ビストロそのまんま店主

福島県郡山市出身。寿司職人だった父の影響と、幼少期の母との料理の思い出がきっかけで自身も料理の道を志す。調理学校を卒業後はさまざまな土地や料理店で腕を磨き、喜楽亭でのカレー修行を経て中学校からの友人と共に「ビストロそのまんま」を上馬にオープン。約20席ほどの店内を1人で回すパワフルな店主。

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