ERな人 VOL. 75 四本 拓也 (アーティスト / ミュージシャン)
ERな人 VOL. 75 四本 拓也 (アーティスト / ミュージシャン)
photo, text, edit by NAOKI KUZE
1906年に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で様々な役割を持ち活躍する”ERな人”達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。
ー四本さんはアーティスト活動とバンド活動の二足の草鞋を履いて活動をされていらっしゃいますが、四本さんのルーツとしてはどちらの活動が先だったんですか?
四本 拓也 (以下 四本): 高校3年生のときなんで18歳ぐらいですね。
ー音楽を始めた年齢としてはそこまで早くないんですね。
四本: 活動をしていない期間もあったので、音楽の活動期間はギュッとまとめると7、8年ぐらいだと思いますね。
ーその音楽を始めるきっかけは?
四本: 中学からの友達がやっていたバンド”スズメーズ”に加入したんです。そのバンドにボーカルがいなくて、それで友達に誘われて僕が入ることになったんですけど、マイクだけ持ってステージに上がるのが手持ち無沙汰すぎて。元々楽器は何もやっていなかったんですけど、ボーカルだけをやるのが嫌でギターも弾くようになりました。そこからギターボーカルとして活動してますね。大学に入ってより精力的に活動もしていたんですけど、僕が大学を辞めたときにありとあらゆる事を辞めたので、バンド活動は一旦お休みしたり。基本的には現メンバーの3人が固定で、1人サポートで入ってもらって活動してますね。
ーではアーティスト活動に関しても伺います。こちらの活動はいつ頃から開始されたんですか?
四本: 2021年です。
ー意外過ぎるんですよね。現在の個展や展示の参加のペースを見ているともっと昔から活動されていたのかと思っていました。アーティストとしても活動するようになったきっかけとは?
四本: もともと展示とかそういったことも何も知らなくて、30歳ぐらいの時にもう潰れてしまいましたが半蔵門のANAGRAっていうギャラリーで友達が展示をしていて観に行ったんです。その時に初めて「展示というものがあるのか」ととても刺激を受けたんですよね。それから自分でもインスタで作った画像をポストするようになって。そうしたらいきなり亀戸アートセンターというギャラリーから「展示をしませんか?」とお誘いがありまして。それが初めての展示になりました。
ーそれは毎年開催されているグループ展ですか?
四本: そうです。毎年参加させてもらっていて、だから2021年からですね。
ー絵などは昔から描いていたんですか?
四本: 描いてはいたんですけど、誰かに見せるみたいなことは考えていなくて。バンドの物販は作っていたりはしたんですけど。初めはその延長ぐらいの気持ちでした。幼い頃から落書きみたいな絵を描くことはもちろんありましたけど、作品と呼べるようなものというか、人に売ったりするようになったのは本当にここ数年の話なんですよ。
ー幼い頃はどんな絵を描いていたんですか?
四本: なんだろうな。ペプシマンとかスパイダーマンを描くみたいな、みんなが描きそうなものを僕も描いていましたよ。アメコミっぽいものは特に好きだったのと、中学の時に渋谷の本屋に立ち読みで雑誌のrelaxをめちゃくちゃ読んでいて。そこでバリー・マッギーをはじめ色々なグラフィティアーティストの存在を知りました。その影響で絵はずっと好きでしたね。
ー2021年からアーティストとしてギャラリーで展示なども行っていく中で四本さんの活動の幅も
広がりましたが、自身の作品が売れた時の感想を聞かせてください。
四本: なんかわかんなくなりますよね。物の価値が。絵が何万とかするわけじゃないですか、こっちからしたらね。もちろん作品制作にかかってるお金はあるけど、これがこの価格で売れてしまうのかとも思ったりするので。あと、作品って、いわゆるペインターの人だったら、額縁に入れてって感じでしょうけど、僕の作品は別にそういう感じでもないので、物の価値が展示をやる度に混乱してくるんですよね。
ーアートの面白い部分でもありますよね。
四本: 個人的にはもっと売れなくてもいいというか。デイヴィッド・ハモンズっていう人が昔に、雪玉を売ってるという作品があるんですけど、なんじゃそりゃって感じじゃないですか。ビニールシートに雪玉をいろんなサイズで売ってるんですけど、でも僕はそういうスタイルがかっこいいと思ってるんです。まだ僕は作品の売れ行きとか、ギャラリーにも貢献したい気持ちもあって、展示する作品や展示にまつわる商品のラインナップも結構気にしてるんです。ちょっとは売れた方がいいよなとか、買いやすいグッズもあった方がいいなとか。ギャラリーにお世話になってる上ではそれは気にした方がいいことだと思うんですけど。バンドに関しての曲作りは作詞以外はほぼメンバーに任せてるんですよ。でもアート作品を作るのはかなり個人競技なので、結構ネガティブな感情の方が多いんです。「しんど。」って思いながら作ってるんですけど、でも友達の展示を観に行って、なんか「意味はわかんないけどすげえな」みたいなことあるじゃないですか。僕もそうなりたいですよね。言語化は難しいけど、「なんかかっこいいよね。」とか、「うわ、なんか飾りてぇ。」みたいな。作品を見てもらう上ではポジティブな気持ちになって欲しいし、すっごい高くてめっちゃ売れてるアーティストっていると思うんですけど、僕は多分そういう流れの中にはいないので、少なくとも現状は地に足がついた作品が作れればなと思っております。
ー四本さんがこだわるワークスタイルを教えてください。
四本: ライブの時はTシャツって決めてます。長袖が弦に当たるのが嫌なので。ギターのボディが白いので黒っぽい色の服を選ぶことが多めですね。ライブだとそれくらいで、個展の時はなるべく目立たないような服装にしています。友達の作ったお気に入りのTシャツとか着たいんですけど自分の作品よりカッコ良い可能性があるじゃないですか(笑)。やっぱり作品を見て欲しいので、目移りされないように目立たない格好をするのと、物販で売っているアイテムを着るようにしています。意外と気にしてます。
ーSMITH'Sのペインターを穿いていただいていますが穿いてみた率直な感想を聞かせてください。
四本: 年齢とともに機能性のある服とかを手に取ることが増えてきているんですけど、ペインターパンツ特有のヘビーオンスでごわっとした硬さが無く生地がとても軽いんですよね。スタジオでしゃがんだりする時とかもストレスがないので快適ですね。ベルトなしでウエストのドローコードで着用できるところも良いなと思います。
LES HALLES PAINTER / CORDLANE / BEIGE
ー今後の展望を聞かせてください。
四本: バンド内でレコーディングをしようって言ってから2年経過しているんですよ。なんでかっていうとそれは僕が歌詞を書けていないからっていうのと、単純に僕がそれぐらいのペースが掛かってしまう人間だからなのか。だから本当は実はやりたいことでもないのかもしれないな、とか。僕は出来ることをやりたいんですよ。展望としてはあんまり自発的なものは今はなくて。幸いライブも展示も誘ってもらえてるんで、それを真面目にやっている状況で。それで改めて毎回知りうることがあって。反省をしたり、もっとこうかな?とか。あとは極力出歩こうと思ってます。人の展示とかライブとか。それぐらい意識しないといけないほど体力が少ないので。最近はプールに通うぐらい体力が少なくなってきていて。あとはこういうインタビューもそうなんですけど、スカさずに生きていきたいです。インタビューで太字になるようなことを言うとカッコ良いはずだとは思うんですけど、そんなことをできなくてもちゃんと曲を作って、作品を作って。お皿洗いとかそういうこともそうなんですけど、やれることをちゃんとやる。それ以外はめちゃくちゃ休むんですけどね。すいません、ふわっとしてて。
ー全然大丈夫です(笑)。
四本 拓也 @yotsumototakuya
アーティスト / ミュージシャン
東京生まれ。日常の中に潜む矛盾や違和感をシニカルな視線でユーモラスに表現し、観るものに新たな視点を提供している。作品のスタイルはジャンルに囚われず、イラストレーション・立体・映像制作など多岐にわたる表現手法を用いる。バンド”スズメーズ”のギターボーカルとしても活動しており、アートと音楽の両面で創作活動を展開している。