ERな人 VOL. 74 横谷 仁 (株式会社LEF TOKYO代表)


ERな人 VOL. 74 横谷 仁 (株式会社LEF TOKYO代表)

photo, text, edit by NAOKI KUZE 

 1906年に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で様々な役割を持ち活躍する”ERな人達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。
20254月、世田谷区の住宅街エリアである葭根公園前にオープンした”COFFEE AND BAKED LOCASA”

ー横谷さんの会社はどのような事業を展開されているんですか?

横谷 (以下横谷): 僕が代表を務めるLEF TOKYOでは、カフェ事業とキッチンカーを1台やっています。実店舗ではカフェを運営しつつ、イベントなどに招待された時はキッチンカーで出店するっていうのがメインの動きですね。

ー事業を始めて何年ぐらいですか?

横谷: 個人の時からだと26歳の時なんで。7年目になります。

ーとなると今年33歳で7年目ですか。とても若い時から活動されていたんですね。

横谷: 最初は古着を販売していたんです。昔からアメリカが好きで自身で買い付けた古着を店舗じゃなくてキャンピングトレーラーで移動しながら販売をするみたいなことをやってました。

ー初めから飲食を手掛けられていたわけではなかったんですね?

横谷: そうなんです。キャンピングトレーラーで古着販売をしてはいたものの、その事業一本で食べていくには少し難しいなと壁にぶつかってしまったんですよね。それで元々飲食業界にも興味はあったので、やっぱり僕はアメリカンカルチャーが大好きだし、買い付けの時にアメリカで見てきたようなキッチンカーを自分でもやってみたいなと思いキッチンカーを作ったんです。するとその2ヶ月後ぐらいにコロナが来てしまって、アメリカに古着の買い付けも出来なくなってしまったことも重なりキッチンカーの事業に注力していくことになったんです。

ーキッチンカーではどんな商品を取り扱っていたんですか?

横谷: コーヒーや焼き菓子のほか、チキンオーバーライスやホットドッグなどアメリカらしさのあるラインナップでした。でもやり始めていくと、日本だとカフェに特化したキッチンカーが意外と少ないなっていうことと、僕がやりたいなと思うことの中でコーヒーの優先順位がどんどん上がってきちゃって。それで商材も徐々に削ぎ落とされていき、コーヒーがメインになりました。でもキッチンカーで提供してきた料理は、今お店でモーニングやランチでブラッシュアップして提供しているので、地続きで今までの経験値が活かされているなと思ってます。

仁さんはバリスタとして自らコーヒーを淹れて提供する

 

食べ応えたっぷりのソーセージとスクランブルエッグ。
スクランブルエッグの下にはアボカドトーストが隠れていて、サラダも添えられている”LOCASA BRAEKFAST”
Cafe Latteや店内のドリンクは足付きのゴブレットで提供されている。

 

ー以前は芦花公園の近くでLOCASAを営業されていましたが、キッチンカーとは別に実店舗を運営することになったきっかけとは?

横谷: そのキッチンカーを常設して、立川のGREEN SPRINGSで営業してた時に遡るんですが、その中にPLAY! MUSEUMっていう施設があるんです。そこのカフェを業務委託してる会社の社長さんと仲良くなったんですけど、僕がそれこそ都内で公園の近くでお店を探してるっていう話をしたら、「一応都内で公園の前で空きテナント持ってるよ?」って教えてくださって。「じゃあ見に行きます!」って実際に伺ってみたらとても良い理想的な物件だったので決めさせてもらいました。その社長さんが以前にその場所でカフェもされていたので機材などもそのまま安く譲って頂いて。もともと代々木公園とか世田谷公園とか色々な公園をリサーチしていたタイミングだったんですが、物件を見にいくまでは芦花公園自体も知らなかったんですけど本当に素敵な公園だなと思いました。ただあの周りにカフェや飲食店が全然無くって。エリア的にカフェのニーズが無くて運営が難しいから無いのか、ただシンプルに無いだけなのかどっちなんだろう?って()。社長さんも「うちがやってた時はこんぐらいしか売れなかったんだよね」と売上の詳細も見せてくれたりもしたんです。でも僕は正直な話「もっといけるよな」って思ったんです。それで腹を決めて「じゃあやってみます」とい感じでLOCASAOPENさせてもらいました。でもオープンして半年ぐらいのタイミングでオーナーだった社長さんではなく、LOCASAの物件の大家さんから衝撃的な相談をされてしまって。

ー衝撃的とは?

横谷: 建物の老朽化による建物の取り壊しの話ですね。大家さんはLOCASAの裏に住んでいらしたんですけど、「ちょっと前から考えてたんだけど、不動産会社が間に入っていたから経営者が変わっていることに気付いてなくて、新しくお店がオープンしたてで、すごい変なタイミングで伝えるのも申し訳ないんだけど1年半後ぐらいに取り壊しを考えていて。」っていうまさかの相談をされて。でも、もう僕も始めちゃった手前LOCASAの営業はそのままやるしかないなっていうのと、その時はまだ、2年近く猶予はあったんで、まだもう少し考える時間はあるよなってやってきてたんですけど、いよいよ、取り壊しの時期が迫ってきてしまって。LOCASAの売上も1年目より2年目の方がお客さんもだんだんついてきて、売上も伸びてきていたのでこれはこのまま取り壊しだからって店をたためないよなって。次の場所を探さなきゃいけないなと。せっかくお客さんもついてきているので、そのお客さんにまた変わらず来てもらえるような同じエリアで、LOCASAのイメージが変わらない似た雰囲気の空間で、よりブラッシュアップして再開できたらいいなっていうのは強く思って物件探しに乗り出したんです。

ー本日は移転オープンして間もないタイミングで新たなLOCASAにお邪魔させて頂いておりますが、この希望ヶ丘団地の近くの葭根公園の目の前の物件にした決め手というのは?

横谷: 初めは図面と、この一面が窓の感じがとても良いなと思って。さらに掘り下げて調べてみると午前中は日が入る方角だし、内装も四角で作りやすそうだし、公園の目の前だしこれは良いんじゃないかと思って内装を手がけている友人にも相談してこの場所に移転することを決めました。

 

道路に面したエントランス側は一面ガラス張りで開放感がある。

 

ー移転期間はどれぐらいで?

横谷: 2月の後半ぐらいから工事をし始めてはいたんですが、芦花公園での最後の営業をしたのが323日で、そこから毎日プロに内装や施工を頑張ってもらいつつ、DIYもしたりして予定よりは少し遅くなっちゃったんですけどなんとか無事に、419日にこの場所でLOCASAを移転オープンすることができました。

 

ー新たな場所でLOCASAが再び動き出しましたが、移転後に営業をしてみた率直な感想を聞かせてください。

横谷: 僕がすごい嬉しいなって思うのは、前のお店を惜しんでくれた人がいて、その人たちがこぞって来てくれたことがめっちゃくちゃ嬉しいですね。ゆうても、たかだかカフェっていうか、僕自身もカフェを行く人の立場の気持ちもわかるので、ひとつのお店がクローズすることと、ひとつのお店がオープンすることって、そこまで大したことではないというか。俯瞰して「カフェができたな、カフェがあるな、カフェがなくなったんだな」みたいな、なんかそういうテンションなのがほとんどだと思うんです。でも僕たちの場合は芦花公園のLOCASAが無くなるってなった時には悲しいって言って、最後もたくさんのお客さんが来てくれて、今度はまた新しい場所でオープンしますってなったら、また同じ人たちがわざわざ来てくれるみたいなことが実際に起こっているので、本当にLOCASAをやってて良かったなとすごい思って。さらにはここは住宅街なので、今までこの辺にカフェがなくて嬉しいみたいに言ってくれる人も来てくださったり、初めましての人も結構多くて。正直、この場所は最寄り駅が遠いとか、いろんなハンデはありつつ、でも、それだからこそ、地域に愛されるようなお店にしたいし、そう思ってお客さんが来てくれたらいいなって思います。

 

ー芦花公園のお店も最寄りの駅が近いわけではなかったので、割と新店舗も環境としては似ているんですかね?

横谷: 正直そこは僕も芦花公園の方で最初めちゃくちゃ不安だった気持ちがあって、それでも2年やって、結構お客さんが来るようになったっていう実績があったんで、あんまり心配はしてなかったんですよね。あとは0からお店を作るっていうの初めて。スケルトンで何もない状態から作ったのが初めてだったので、僕がやりたいこと、表現したいことみたいなのが、どこまでお客さんに受け入れてもられえるかっていうところが不安でもあったんですけど、不安と楽しみと半々ぐらいであって。実際に自分なりにはイメージした空間を作ることができたので、あとはこの空間を好きでいてくれる人を大事にしてやっていけたらいいなと思ってます。

LOCASAのコンセプトを教えてください。

横谷: 提供する商品とか、お店の雰囲気で、僕がイメージしてるいるのはやっぱりアメリカのカルチャーなんですよね。でもごりごりのアメリカのダイナーとかじゃなくて、田舎にポツンとあるちょっとカントリーな感じのカフェレストランみたいなのをイメージしています。芦花公園の時もそういったところは同じくイメージしてはいたんですが、居抜き物件だったので、元々あったものを付け加えてやってた分を、新店舗では完全に自分のイメージで作れたかなって思っています。もちろん上限はありましたが、細部まで可能な範囲でお金をかけて。あとは今まで使っていた什器や持っていたインテリアなども駆使して、うまく組み合わせられたかなと思ってます。

ー確かにアメリカの空気感はあるのですが、いわゆるダイナーとは違いローカルな温かさのようなものを感じます。

横谷: それを感じてほしいなとは思ってました()。僕はやっぱりアメリカに行くのことも好きだったんで。アメリカで行きたいお店ご飯屋さんもやっぱり朝に新聞を広げることができるぐらいの入りやすいお店とか、なんかそういう人がコーヒーだけでも楽しめるし、ご飯を食べようと思えば食べれるし、みたいないろんな使い方できる朝のお店みたいなカフェとかレストランが好きなんですよ。単純に夜の街が怖いっていうのもあるんですけど()。アメリカに行くのは頻度はどっちかっていうと西の方だし、サンディエゴの方に下っていくときとか、あとはポートランドの方に向かっていく時とか、その道中で、僕が好きなタイプのカフェとかレストランを見てたかなっていう感じです。僕の中でそういった店で印象に残ってるものが影響していますね。

MORNINGLUNCH PLATEの他、焼き菓子やスイーツも充実している。

店内はペット同伴OK。愛犬と一緒にオヤツを楽しめるのもLOCASAの魅力。

 

ー横谷さんのワークウェアのこだわりを教えてください。

横谷: もちろんいいものを着たいなとは思っているんですけど、耐久性だったり、あとはペンとかもよく使うので、ペンを入れるポケットがたくさんあるとか。月並みかもしれませんが動きやすさと、汚れても大丈夫なタフさと、ガシガシ洗えることとかはやっぱ意識してますね。汚れを業務中にを気にしたくないので、逆に汚れてもかっこいいとか。僕は古着屋からスタートしているので古いTシャツ、古シャツが好きだし、それに合わせるワークパンツは、なんかむしろ汚れた方がかっこいいなとも思いますね。コーヒーが飛んでも容赦なく使うっていう感じ。働く時もお洒落はしていたいので、僕が仕事をする上でのワークウェアは汚れとかを遠慮する洋服を着るっていうよりかは、もうどんどん汚していけるのがワークウェアかなって思いますね。スミスのペインターも昔から穿いていたので、昔から僕のフィーリングにピッタリハマってくれるブランドだと思っています。

LES HALLES PAINTER CORDLANE / CHARCOAL

 

ー今後の展望を聞かせてください。

横谷: 作ったばっかりの新しいLOCASAにこれから命を吹き込んでいくというか、この店を10年は続けたいし、10年後もすごく愛されているお店であるように、毎日頑張りたいなって思います。今までは自分で0から全て作るお店を持つのがひとつの目標だったんですが、ここからはこのLOCASAにどんどん命を吹き込んでって、このエリアに根付いて、このお店があるからこの辺に住みたいっていう人が出てくるぐらいまで、たくさんの人に愛されるお店にしたいなっていうのがこれからの新しい目標ですね。

 

横谷 @2j0i0n0

株式会社LEF TOKYO代表

2018年、福生を拠点にキャンピングトレーラーをオリジナルカスタムした古着の移動販売からキャリアをスタート。2019年にキッチンカーFEX COFFEE & FOOD EXPRESSをスタート。2022年には世田谷区・芦花公園の近くに初の実店舗となるCOFFEE AND BAKED LOCASAをオープン。現在は同じ世田谷区の葭根公園前にLOCASAを移転オープン。

COFFEE AND BAKED LOCASA 東京都世田谷区船橋6-23-29 パークビルすがの1F

@coffeeandbaked_locasa

FEX COFFEE & FOOD EXPRESS

@fexcoffee_foodexpress