ERな人 VOL.63 OKI KENICHI (アーティスト)
SMITH'S AMEICANのウェブコンテンツERな人のスペシャル企画として、アーティストのOKI KENICHI氏が2度目の登場。
近況やコンテンツの公開に合わせて発売するコラボレーションアイテムについて語って頂きました。
ー今回スミスとのコラボーレーションが実現するということで、OKIさんには2023年の9月以来の2度目のご出演となります。宜しくお願いします。
OKI KENICHI (以下OKI): 宜しくお願いします。
ー今回コラボーレーションアイテムの制作現場に実際に立ち合わせていただき、その模様も撮影させていただきました。今回は1点1点下書き無しでアイテムに直接スプレーで描かれていました。今回のコラボレーションではなぜこの手法にされたのでしょうか?
OKI: なんて言ったらいいんですかね。アパレルに何か絵柄を載せる時って基本的にはグラフィックデータに起こしてシルクプリントやインクジェットプリントじゃないですか。そういった手法で作るアパレルに僕がちょっと飽きたなっていう思いがあって。だったらもう自分でスプレーで直接描いてしまおうと思ったのが始まりですね。通常の作品制作で絵を描く時と違ってアウトプットがアパレルアイテムなので、自分で描くからには自分が着たいと思えるデザインであることと、今回でいうとスミスのカバーオールやペインターパンツはワークアイテムの王道ともいえるタフなイメージなので、柔らかいイメージの花を描いた方が僕個人としてもより着やすくなるなと思ってスプレーで花を描かせていただきました。
ー今回描いていただいた花のアートについて掘り下げたいと思います。以前と違い、最近のOKIさんの作品もスプレーで描く手法の作品が多いように感じます。
OKI: 僕、結構きちっとしている性格なので、作品を制作する時の塗りとかもムラなく綺麗に塗れていないと嫌なタイプなんですけど、スプレーは気温とか、ヘッドの調子とかで手はいつも通り動いているのに、スプレーが言うことを聞いてくれないってことがあったりするんですよ。自分がコントロールできない時と、しっかりコントロールできてる時のアンバランスさみたいなのが楽しくて。スプレーの噴出口が1回詰まって、またバっ!と出たけど、この出方ってかっこいいよなって思えたりとか、自分の中でも心境の変化もあってそういうイレギュラーなことも楽しめるようになってハマってる感じですかね。11月末に久々に開催した福岡の展示でも、スプレーだけで描いた絵も初めて発表しました。
ースプレーを使った作品のテーマとして花を描くことが多いようですが、そのきっかけはあるのでしょうか?
OKI: 僕は作品制作を行う際、基本的にテーマがあって作品を考えていくっていう描き方なんですけど、この花の絵に関しては、エレファントカシマシさんの「Easy Go」という曲の歌詞に
”剛者どもの夢のあと 21世紀のこの荒野に 愛と喜びの花を咲かせましょう”
っていう一節があるんですが、僕の勝手な解釈として音楽ってコード進行のパターンが世に全部出尽くしているって言われてる中で、先駆者たちが夢を叶えるためにいろんなことをやってきて、もう荒れ果てた荒野で夢を追うのは難しいけど、それでも愛と喜びの花を咲かせていこうよっていうことなのかなと。それってなんかすごく絵とも共通するし、いろんな人の人生にも共通するなと思って。だったら僕が愛と喜びの花をテーマにラブとジョイの花を描いて、それをいろんな人の家とか店とか、大切な場所に届けていけたらいいなという想いで花を描くようになったんです。
ーなるほど。クリエイティブの世界に身を置く人にとっては誰しも共感し得る話ですね。
OKI: 絵とかもやっぱり誰々の作風に似てるとかあるじゃないですか。でも僕は誰にも似てないよねって言われるのが嬉しくて。それでいて、みんながかっこいいと思えるようなものをずっと求め続けているので、作風も1個に固定しないし、どんどんもっと良いもの、もっと良いものって思いながら、日々作風を変えながら制作してるような感じです。
ー前回取材をさせていただいたのがOKIさんが福岡から東京に拠点を移されて1週間ほどしか経っていないタイミングでアトリエにお邪魔させていただいたのですが、そこから1年4ヶ月ほど経ちました。東京での新たな活動はいかがでしたか?
OKI: 楽しめてるのが1番良かったですね。苦しいこととか色々あったかもしれないですけど、東京で個展も開催することができましたし、僕はこの1年と数ヶ月は楽しかったので、それは救いかなって思ってます。あとは東京は思いもよらない人に出会うタイミングがあるというか、福岡はやっぱり街がそんなに大きくないので、自然と人との繋がりが生まれやすいんですけど、東京って自然に繋がれる場所じゃないので。でも、いろんな人たちがいるので、動いた分だけ自分も思いもよらない人に出会えたりとか。で、思いもよらない仕事を一緒にできたりするので、東京ならではというか、予定調和ではない人との出会いが楽しいですね。何より以前のインタビューでは大好きな絵をずっと描き続けられるように楽しみながら頑張っていきたいと自分でも言っていたので、それが体現できたことは本当に良かったです。
ー新たな出会いもあり、アーティストとして楽しみながら活動を続けてこられたことは素晴らしいですし、喜ばしいことですね。
OKI: 作品も僕の中ではいい風に変わったというか、自分の気持ちがポジティブな方向に向いてるから、作品もどんどん良い方向に向かってんのかなと。これからは2年、3年って経っていくうちに、自分がちゃんと経験や出会いを活かしていけるというか、ちゃんと無駄にせず活かしていけるかで変わってくんのかなとは思ってますね。
ー前回は最終的にはアメリカ・ニューヨークを拠点にして活動するのが夢だとおっしゃってたんですが、その夢の手前の話で、上京して1年4ヶ月を経た上で改めてお伺いしますが、日本でどんな活動をしたいですか?
OKI: 僕がずっとしてみたいことは、やっぱり以前もお話したと思いますが街の中にパブリックアートを手掛けてみたいんですよね。正直、福岡に居ようが東京に居ようが、僕がやりたいことっていうのはずっと一緒なので、絵をとにかく楽しく描き続けて、やりたいことにちょっとでも近づいていけたらなと。まだまだ夢の途中ですね。
ー最後に、今回のスミスとのコラボレーションで、全てOKIさんのスプレーアートによる1点もののアイテムを色々作っていただいたのですが、あえて伺いますが、どんな人に着てもらいたいですか?
OKI: 全然どなたでも着てもらえたら嬉しいです。僕がスプレーを吹いたことで、ワークアイテムがファッション的に寄るというか、ちょっと個性的なファッションのアイテムとして取り入れたいっていう人もいると思うんですけど、でもやっぱりスミスはワークウェアなので仕事着としても着てもらえたら良いなとも思っていて。仕事中にガシガシ着てもらって、このスプレーの塗料が剥がれていったりとか薄くなっていったりする経年変化をデニムとかインディゴの色落ちを楽しんで穿いたりするように、働きながら楽しんでもらえたらいいなと思いますね。それにどれも僕が直接スプレーで描いた一点物のアイテムなので、その世界に一つだけの特別感も味わってもらえたら嬉しいですね。
OKI KENICHI @okiiiiiiiiii
アーティスト
人物を変形させることで思考を表現した抽象画、アルファベットを独自の形に変形させた文字作品、またはその2つを掛け合わせた作品をベースに、立体作品やインスタレーション作品なども発表している。2014年にはニューヨークへ渡り、Bushwick Open Studiosの参加アーティストに選出され、その後、国内のみならず海外での活動も続けている。
また、アパレルブランドやミュージシャンとのコラボレーションアイテムのデザインも多数手掛ける。
OKI KENICHI オンラインストア https://okikenichi.net