ERな人 VOL.56 Pigu (10匣/ 夢であえたら)

ERな人 VOL.56 Pigu (10/ 夢であえたら)

photo, text, edit by NAOKI KUZE 

1906年に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で様々な役割を持ち活躍する”ERな人”達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。 

 

ー今までPiguさんは世界各国を回り、その土地土地の日本のガイドブックには載っていないようなローカルカルチャーをアパレルアイテムや、イベントとして落とし込まれてきました。しかしながら今年の3月にPiguさんにとって異業種とも言える立ち飲み屋「夢であえたら」をOPENされました。なぜ「夢であえたら」という立ち飲み屋をOPENしようと思われたのでしょうか?

Pigu: 2つ理由があって。まず1つは、今までの「10匣」の活動だけでは十分に伝えることができない僕が好きなことっていうのがお酒なんです。僕は今まで何十年も旅をし続けていて、旅先でサーフィンをして、いわゆる日本のバイヤーが行かないようなお店でビンテージを見つけて、ご当地の珍しい生地を見つけて、そしてそれを日本に持って帰って、ファッションやイベントに落とし込んでローカルカルチャーを伝えることが1番好きなことなんです。そしてその活動をしていると必ずお酒が関わってくるんです。僕は現地で飲むお酒のカルチャーも大好きなので、そのお酒のカルチャーを伝える場を持ちたかったのが1つですね。

 

ーなるほど。確かにお酒はファッションアイテムだけでは伝えきれないカルチャーですね。

Pigu: あともう1つの理由が、その「夢であえたら」っていう、店の名前にも繋がってるんですけど、「10匣」はおかげさまで、201716日にローンチしてから7年間、今までずっと同じなんですよ。良いも悪いもなく、ずっと同じで。「10匣」は僕が自由に世界を飛び回るっていう夢を持って始めたんですけど、それが割と早い段階で叶ってしまって()。そうなってくると自由であることが本当に暇になってしまって。例えば今の僕は明日に急にLAに行こうと思ったら本当に行けてしまうぐらい自由なんですよ。そんな自由でいることに遂に飽きてしまって、そんな気分で始めたのが綱島にある「KENZAI DEPOT」というスケートランプが常設されたショップなんですけど、今度はその自分の為に何かするっていうことにも飽きてしまって。それで今度は自分の為ではなく誰かの為に何かしたいなと思うようになったんです。それでアフリカのどこかに、子どもたちのために学校を作るっていう夢を持ちました。「夢であえたら」は「10匣」をサポートしてくれる人だけじゃなくて、色んな人が足を運んでくれて知り合いになれるんです。お酒を酌み交わすことで毎日新たなコミュニティを作ることが出来るので本当に毎日「夢であえたら」の可能性を感じますし、「夢であえたら」に来てくれた人たちが、ここでお金を使ってくれて、そのお金で、その「夢であいましょう」って意味の「夢であえたら」という店名なんです。2つ目の理由はそういうことなんです。

 

「夢であえたら」は #夢あ」 の愛称で呼ばれている。

 

ー形式上は飲食店なので異業種のように感じますが、「夢であえたら」はファッションアイテムをメインに取り扱わなくてもとてもPIguさんらしさを感じます。

Pigu: 「夢であえたら」も「10匣」と考え方は一緒で。「10匣」は服屋じゃないし、ブランドでもないんです。で、「10匣」っていうカテゴリーがあって、そのルールの中でやってるから、絶対に僕たちが1番なんですよ。どことも競い合ったりはしない。そもそもライバルがいないみたいな。「夢であえたら」に関しても、僕らなんか飲食店だと思ってなくて。「夢であえたら」っていう場所。だからコミュニティーストアっていうか、コミュニティスペースっていうか。なんかそういう感覚でいるんです。

 

Piguさんのアウトプットがファッションアイテムからお酒や食事のメニューになっているだけで、Piguさんが伝えたいローカルカルチャーの根幹の部分は全く変わらないから、「10匣」を昔からサポートしている人も、新たに「夢であえたら」を知った方にも愛される空間になっているんでしょうね。

Pigu: そうですね。取り扱うものがここではお酒や食事になったからといって全く難しさは感じてないですね。僕は世界中を回ってきましたし、日本も何周もしてますけどそこで良いな、美味しいなって思うものを卸で取り扱わせてもらったり、オリジナルメニューの開発に取り入れてお出ししているだけで。あとは僕が飲みに行ったりした時に、これは絶対やだ、これは絶対嬉しいっていうサービスは見逃さないように教訓にしたり取り入れたりすることを重視してるんですよ。

 

「夢であえたら」の女将の中村かおりさん。元パティシエの彼女が1人で仕込み作る料理はどれも絶品。

 

気さくなかおりさんはいつも気軽に話しかけてくれる

 

ー「10匣」で海外の珍しい生地を探してオリジナルアイテムを作るのと同じ感覚で、お酒や食事のメニューも作られていて実にPiguさんらしいと思います。

Pigu: そうですね。絶対譲れないことと言えばキンキンに冷えたグラスで出てくるビールのエピソードがあるんですけど。アサヒビールさんが、ここの生ビールは美味いですみたいな認定があるんですけど、グラスを凍らせてるとその認定がもらえないんですよ。理由は凍らせると凍った表面の水分が溶けて味が変わっちゃうじゃないですか。でも確実にビール党の人は凍ってキンキンに冷えたグラスで飲むビールの方が好きな人多いと思うんですよね()。僕も完全にそっち側だから認定はいらないと思っています()。グラスをキンキンに凍らせて待っているのでうちのビールを飲みに来て欲しいです。

 

タイのミルクティ割りお酒メニューは全てノンアルコールでも注文が可能。

名物夢焼きそば日本の焼きそば麺をタイ風に味付けした不動の人気メニュー。

オープン後に新たに加わった人気メニューの生姜焼き生の生姜・ニンニク・リンゴのすりおろしをたっぷりと使用。上に乗ったスライスリンゴも良いアクセントに。

 

湯気の立った熱々のミニライスと一緒に注文し、ミニ生姜焼き定食にするお客様も多い人気の組合せ。

元パティシエのかおりさんならではのレアチーズケーキも締めのデザートとして大人気。本格スイーツが楽しめるのも「夢であえたら」の魅力のひとつ。

 

ーお店の内装もOPEN時よりも随分アーティストの描き込みやアート作品が飾られてアップデートされているように感じます。

Pigu: はい、実は完全に計算してました。うちは所謂普通の飲食店とか居酒屋さんとかと違って、何にも置いてないスタイルで、張り紙も特にしないようにしていて。ビジュアルにめちゃくちゃこうこだわっています。ここに来る人たちっていうのは、洒落た人が多いだろうなっていうのは最初から想定してたんで、そういう人たちがここに来た。っていう雰囲気でお店の空間が出来上がるような余白を残していたんです。だからポップさっていうのはそこまでいらないですね。例えばよくあるスケートボードを飾ったりとか。スケートボードは別に飾る必要はないし、スケーターが来てくれたら成立してしまうし、友達に画家が多いんで、ここに来てくれた時に描いてくれたら嬉しいなって思ってて。そんな感じでちょこちょこ描いてもらってます。

 

MOTAS.

Charlie (VIRGIL NORMAL)

Lonesome Town

寿印

OKI KENICHI

 

ー今回とのコラボレーションで、「夢であえたら」のユニフォームとしてSMITH’Sのアイコンでもあるペインターパンツレアールをコラボレーションさせていただきました。ホワイトのレアールに汚し加工が施されています。なぜユニフォームとして汚れが目立つホワイトのペインターをチョイスされたのでしょうか?

Pigu: パンツは黒か白しかほぼ穿くことがないんですけど今回白を選んだ理由としては、今でこそいろんな国に行ってるんですけど、前職時代はLAばかり行っていて、そん時にいた、友人や周りのスケーターとかサーファーが、上下真っ白のスタイルていう人が結構いて、とても良いなと思って穿き始めて白いパンツが好きになったんですよ。でも汚れちゃうからって白いパンツを穿かない人って結構いるんですよね。でも僕は「10匣」をやる前から穿いている白いパンツで5年間洗ってないパンツがあったんです。その白いパンツを穿いて行く土地土地で、その仲間のお店のショップのスタンプを押したり、絵を描いてもらったりみたいな。だから、なんか僕、汚れてる白がすごい好きなんですよね。

 

オフィシャルグッズのマルチケースを実際にバックポケットに入れて汚れ加工を施しているこだわり。リアルなマルチケースのアタリが表現されている。

 

フロントにはロゴマークを刺繍している。

 

「夢であえたら」は禁煙で、喫煙する際は店外で携帯灰皿を使うことがルールになっている。マルチケースとしても使用できる携帯灰皿はオリジナルグッズの中でも人気のアイテム。ちなみにTシャツは非売品でポイントカードのポイントを30ポイント貯めるとGET出来るという。

 

ーかおりさんをはじめ「夢であえたら」で働いている人が穿いても、白だからと言って汚れが気にならなさそうな汚れ加工ですね。

Pigu: 理想の汚し加工を施してもらえました。加工の汚れ感がリアルで良い感じですね。違う色の汚れがついても雰囲気良さそうだし、料理を食べた人がパンツで汚れを拭いたりしても良い感じに汚れが育っていきそうですね。少し前から先行してサンプルのパンツをかおりに穿いてもらって営業をしてましたがすでにお客さんから反応もあって、欲しいって言われてしまっていてコラボのアナウンス前からお客さんにはコラボのパンツを出すことがバレてます()

 

Piguさんが働く時に大事にしているスタイルとは?

Pigu: 大事にしていることはもうとても簡単です。僕にとってはファッション = ユニフォームです。10匣は旅をする上でのユニフォームを作ってるだけなんで、このSMITH'Sのレアールも「夢であえたら」でのユニフォーム。汚れてもいいことを想定してっていうことですね。

 

ーアフリカに子どもたちのために学校を建てたいってという夢があると思うんですけど、その他に将来の展望などはありますか?

Pigu: 今の僕にはアフリカに子どもたちのために学校を建てるっていう夢、それしかないんですよね。でも、その夢を叶えるにあたって、例えば「夢であえたら」をフランチャイズ化するとか。今、僕は本当に職業としては無職だと思ってるんです。「夢であえたら」もはじめは仕事だと思うようにしてたんですけど結局楽しいだけなんでもはや仕事じゃないんですよね()

ー最後にもう一つだけ質問を。次に行きたい国はどこですか?

Pigu: フィンランド。

ーフィンランドは意外でした。

Pigu: 「夢であえたら」に来てくれるようになったフィンランド人のお客さんがいるんですけど、フィンランドって、家具とかもそうだし、ストリートのカルチャーもあるし。民芸品もあるし、意外となんでも揃ってるなと思って。今ってもうアメリカは円安過ぎるし、ちょっと行き過ぎちゃって個人的に新しいものが無いんですよ。だから今はすごいフィンランドに行きたいと思ってますね。ただ、近々だとタイも面白いと思っています。タイの中でもチェンマイはまだまだ掘っていきたいですね。だから、極端なんですけどチェーンマイかフィンランドです()。面白いローカルカルチャーを見つけてくるので是非楽しみにしててください!

 

Pigu @mr.pigu

10 / 夢であえたら

世界中を自由に飛び回り、様々なジャンルの人々とのコミュニティを広げ、独自のクリエーションスタイルを築く。

----------------------------------------------------------------------------------------------

* SMITH'S X 夢あ hard worker painter / LES HALLES painterは、9月中旬よりスミスアメリカン公式オンラインストアにて数量限定にて発売予定です。

 

BACK TO ER TOP