ERな人 VOL.41 東 将平 (スタイリスト / Deer nakameguro)

ERな人 VOL.41 東 将平 (スタイリスト / Deer nakameguro)
photo, text, edit by NAOKI KUZE

 

1906に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)1970年台に日本 で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で 様々な役割を持ち活躍する”ERな人達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。

 

ースタイリストとして独立されたのはいつ頃ですか?

東 将平 (以下 東): 独立をしたのはちょうどコロナの緊急事態宣言の時なので2020年の春ですね。

 

ーすごいタイミングで独立されたんですね。世の中の流れも大きく変わっていく中での独立に不安はなかったですか?

: 当時ファッション業界も大きくコロナの影響を受けていて、ニュースでネガティブな報道が続いていたりする中で僕も「このままだと世界が終わっちゃうんじゃないかな」とか「死んじゃうんじゃないかな」とか思った時に、今自分がやりたいことに素直に向き合いたいと思ったんですね。ファッションに限らずコロナで失われていく出来事も多かったですけど、逆にリモートとか新たに生み出されるカルチャーもあったので、独立するのは「逆にチャンスなんじゃないか?」と思えたんです。ちょうどスタイリストアシスタントの後輩も出来たタイミングでもあったことと、知り合いのブランドのLOOKを任せてもらえていたり、少しずつですけどスタイリングのお仕事はあったので「何とかできるんじゃないかな!」って、思い切って師匠であるスタイリストの井田正明さんに相談して独立させて頂いたんです。

 

ーいざ独立されてみていかがでしたか?

: 案の定、全然仕事がなくて初めの頃はウーバーイーツの配達員もやってました()

 

ーコロナ禍では広告業界で売れていた人も仕事がキャンセルになってしまったりクライアントが減ってしまったっていうのはよく耳にしました。なかなか厳しい状況でしたよね。

 

: ウーバーイーツしながらスタイリングの活動をしばらくしていたんですけど、ある日この物件のオーナーでもある”Niche.”のデザイナーの大村さんからLOOKのスタイリングの依頼を頂いたんですよ。コロナ禍でのオファーで僕も嬉しくて「是非!」って感じで受けさせてもらったんですけ ど、その時の”Niche.”のコレクションの中にニットが2品番ありまして、スタイリングしてた時からそのニットが「めちゃくちゃ良いですね!」って言ってたんです。実際に撮り下ろしたLOOKは 全体的にもすごく納得のいく出来で、その中でも個人的にニットのLOOKはとても気に入っていて 「やっぱりめっちゃ良いですね!」って言ってたんです。そうすると大村さんが「ここスペース空いてるし良かったらニットの店やってみる?」って持ち掛けて下さったんですよ。それで僕もまだまだスタイリストとしては暇を持て余していたので「12ヶ月ぐらいの期間限定のお店かなぁ?」 と思いつつ面白そうだったので「是非やらせてください!」とお引き受けさせてもらったんです よ。それがこの”Deer nakameguro”なんです。いざ”Deer nakameguro”をオープンするとニットはすごく反響がありました。それに加え元々”Niche.”のお店が無かったこともあって、既存の”Niche.” ブランドのファンの方も沢山来店してくださってとても良い結果を残すことが出来たんです。僕としても、スタイリストとして独立したものの、お店が好調だったので仕事の比重がお店の方にシフトしていきました。でもお店があることで僕がスタイリストをやっているっていうことを認知してもらうきっかけにもなって、徐々にお店の好調と比例してスタイリングの仕事の依頼も増えていって、今に至るという感じです。

 

ー素晴らしい転機だったわけですね。その後”Niche.”のニットのみが”MacMahon Knitting Mills” というブランドに派生したということでしょうか?

 

: ニットに関しては本当に爆発的に売れ始めていたので、ここまで反響があるなら独立したブランドとして世界観を構築していく方が良いのではないかということになり、”MacMahon Knitting Mills”という新たなブランドとしてLOOKも単独でちゃんと制作してスタートすることになりまし た。時代の波とも合っていたのか、著名な方にも購入してもらうことも増えてどんどん広がっていったのかなと思います。なので狙ってここまで成功したわけではなく、偶然が重なって今のようなありがたい状況になっていると感じます。

 

 

 

Deer nakameguroは中目黒銀座商店街の近くの路地奥を入ったところの建物の一階にひっそりと構えている。

 

 

スタイリスト業務がない時にだけオープンしている。オープンの際は東さんが直々に接客をしてくれる。

 

 

ーもう少し話を遡って伺いたいのですが、スタイリストを目指されたきっかけも教えてください。

: 元々BEAMS5年ほどショップスタッフをしていたんですけど、その時に店舗で配布されていたもので、様々なスタイリストやクリエーターを起用して制作されていた”NEW PAPER”という刊行紙を毎回とても楽しみにしていて。掲載されているLOOKがどれもめちゃくちゃカッコ良くて刺激をもらっていたんですよね。コロナ前の時代は今よりもファッションスタイリストがファッショ ンを牽引していたと僕は感じていて、同時にスタイリストという職業に憧れも抱いていたんですよ。そうすると、元々知り合いだったスタイリストで、のちの僕の師匠となる井田正明さんから 「アシスタントやらないか?」とお声掛け頂いたんです。BEAMSでの販売を5年間楽しくやってきていたので色々迷ったんですけど、このままBEAMSで一生働くか、フリーランスで外の世界に飛び出すかの2択だなと考えたんです。僕の友人の中でも20代半ばでフリーランスで活躍している人も多かったし、そうやって活動している人の人間力はとても魅力的だと感じていたので、僕自身ももっと成長したいと思って、あえてあまり深く考えずに勢いに身を任せてBEAMSを退社させて もらって、井田さんの元でスタイリストアシスタントとして師事させていただいたんです。

 

ー現在はスタイリストのみならずDeer nakameguroの運営など、様々な活動をされていますが、 活動の中で楽しいと感じることはどんな時ですか?

: はじめは「スタイリストになって売れたい!」っていう目標があったんですけど、お店をやってみたり今はPRの仕事も任されたりしているんですけど、色々な仕事をやったり、流れに身を任せた方が良いなと思うようになりました。「こうだ!」って決まった動きをするよりも、スタイリストという仕事に囚われずに活動をした方が予定調和ではない出来事や出会いがあって楽しいんですよ。もちろん大変なこともありますが、予期せぬことがあった方が自身の引き出しも増えますしね。独立してもうすぐ4年になるんですが、そんな色々な活動を踏まえた上で2024年はもっとスタイリストの仕事を頑張りたいと思っています。色々な経験をさせてもらっているのでその経験をよりスタイリストの仕事でブラッシュアップさせていけたら良いかなと思っているんです。

ー今後挑戦してみたいことはありますか?

: 僕は海外に一度しか行ったことがなくて、それもタイにしか行ったことがないので海外に行ってみたいと思っています()。人口300人ほどの本州で一番人口密度の低い和歌山の田舎で僕は育ったので、東京に出てきて活動ができて本当に楽しいんですよ。海外でも活動できたらさらに楽しくなるだろうなと。なので仕事で海外でLOOKを撮りに行ってみたいですね。ただ一番の問題 は、自分の意志で途中で降りることが出来ない飛行機が本当に苦手なので、まずは飛行機を克服できるようにならないといけないのかもしれません()

 

 

LES HALLES PAINTER / LIME

 

 

 

 

東 将平 @shohei_higashi
スタイリスト / Deer nakameguro BEAMS原宿の名物ショップスタッフとして活躍後、スタイリスト井田正明氏に師事。 独立後はスタイリストとしての活動と並行し、中目黒にて不定期で営業を行う”Deer nakameguro” を運営。スタイリング・ディレクション・PRなど、スタイリストの型には囚われない活動にファッションギークからも一目置かれている。

Deer nakameguro @deer_nakameguro
Macmahon Knitting Mills @macmahon_knitting_mills