ERな人 VOL.37 illiomote (Musician)
photo, text, edit by NAOKI KUZE
1906年に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台に日本 で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続け てきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で 様々な役割を持ち活躍する”ERな人”達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。
ーお二人は幼馴染で結成されたバンドとのことですがilliomoteを結成されてどれくらい経ちましたか?
YOCO: バンドを結成したのは高校に上がったタイミングになるんですけど、実は初めは4ピースロックバンドとしてスタートしたんですよ。
MAIYA: YOCOがギターボーカル、私がギターで、あとはベースとドラムがいたのでオーソドックスな編成だったんですけど、リズム隊が高校の卒業のタイミングで抜けてから今の2人体制の illiomoteになりました。
L→R YOCO(Gt,Vo) MAIYA(Gt,Sampl)
ーリズム隊が抜けちゃったんですね。
YOCO: はい(笑)。リズム隊がいなくなっちゃったのでその時はアコースティックデュオになっていた時もあるんですけど、のちに打ち込みを取り入れた今のスタイルになっていきました。あえて 結成の時期をお答えすると、私たちとしては高校の時ではなく出会った時から数えてます(笑)。
MAIYA: 2歳の時に出会って、今25歳なんで結成して23年ってことです(笑)!
YOCO: まあまあ大御所だね(笑)。
ー通っていた学校もずっと同じだったんですか?
MAIYA: 保育園・小・中・高ずっと一緒ですね。illiomote結成はさっき23年って話しましたけど、 YOCOとの音楽活動だけでも10年ぐらい経ちましたね。
ー先程アコースティックデュオを経て打ち込みを取り入れられたとお話しされていましたが、バ ンドとしてはリズム隊が抜けてしまうのはかなりの大事件だと思いますが、音楽活動を辞めるという選択肢はなかったんですか?高校を卒業してからはどのように活動をされていたのかも教えてください。
YOCO: 一緒にいるのが当たり前だったので辞めるっていうのは全然考えたことなかったですね。 かといって2歳からの幼馴染なんで新しいメンバーを迎え入れるのも良い出会いがあれば考えますけど、この2人の出来上がった空気感の中に入り込めるメンバーはそうはいないだろうなっていうのもありますね。あとはライブのオファーがあったらもう2人でやっちゃおっかって感じだったので。
MAIYA: それにリズム隊が抜けてから2年ぐらいは私たちも結構忙しくて音楽活動自体をあまり精力的に活動できなかったんですよね。YOCOが専門学校に進学して忙しかったし、私はまだ高校生だったんですよ(笑).。
YOCO: (爆笑)
MAIYA:高校生活を4年やることになって周りに置いていかれてたので「高校ちゃんと行かなきゃ」っ てなってました(笑)。なので20歳ぐらいまではスタジオすらたまにしか入ってなかったですね。音楽活動はのんびりしたペースでした。
ーなるほど。多忙を極めていたわけですね(笑)では音楽的な部分の質問になるんですが、打ち込みを取り入れようってなったきっかけはなんだったんですか?
YOCO: ライブの時だよね?
MAIYA: アコースティックは好きなんですけど、illiomoteは本来4ピースバンドの形態で活動していたわけで、2人編成だからといってアコースティックギターでしんみりしたライブをするのにも飽 きてきてしまったんですよ。私自身がillomoteとは別にロックや、ハードロックのバンドも好きで やっていたので、ギターの音を歪ませたかったし、アコースティックも最高なんですけど、それだ けを私たちがライブでやるのはちょっと違うなって思った時に「PC買うか」ってなったんですよ。とにかくライブでしんみりさせるのではなく気持ちを上げていきたかったですね。
ーそういった経緯で私たちにはビートが必要だと。
YOCO: はい。そう行った経緯で初期のライブではMAIYAちゃんが作ってくれたビートをRoland の”SP-404”っていうサンプラーで鳴らしてギターや歌を重ねてライブをし始めたのが2019年の冬頃だったんです。
MAIYA: それが”今”のilliomoteのスタートになりますね。
Illiomoteが普段レコーディングや打ち合わせを行っているレコード会社ULTRA-VYBEが運営するULTRA SHIBUYA。
普段から家ではレコードを流しているというilliomoteのおふたり。
Illiomoteの作品はほぼ売れてしまっていて、この日の在庫は以前リリースしたカセットテープ作品の「X’mas song」
ーilliomoteの楽曲はお二人とも作曲をされているようですが、どのように楽曲を制作されている んですか?
YOCO: 最近はそれぞれ別で制作してきてから良いなって思ったアイデアとか楽曲を持ち寄ってカタチにしてますね。私の場合は、「作るぞ!」って奮い立たせてから作ってますね。最近の制作で注力しているのは歌詞で、パッと耳で聴いた時に入ってくる日本語と、キャッチーなメロディー であることを大切にしてます。前までは適当なビートに適当なシンセを鳴らしてみて「フンフン ♪」って鼻歌で流れを作ることが多かったんですけど、今は何も無いところからiPhoneのボイスメモを使ってヒューマンビートボックスみたいにビートを口ずさんだ録音メモを聴いて浮かんできた 言葉やメロディーをとにかくたくさん入れ込んでいき、それにタイトルもちゃんとつけて構築して いくっていうスタイルを取ってます。
ーMAIYAさんはギターから作りますか?
MAIYA: 私は今は打ち込みで作ることが多いですね。まずはビートを打ち込んで楽曲の雰囲気とか 骨組みを作ってからコードを打ち込んで、ギターのリフやシンセのリフを入れて肉付けしていく感じで。私は歌詞を書かないので楽曲の中に思っていることとか情景を表現しています。
YOCO: MAIYAちゃんの作るトラックは情景が本当にうまく表現されてると思うんですよね。説明 がなくてもこの音は「水だな」とかこの音は「風だな」とかしっかり感じ取れるんですよね。そ れにすごく爽やかな曲調に良い塩梅で歪んだギターが入っているのもMAIYAちゃんの持ち味だと 思います。
MAIYA: こんな見た目だけど爽やかな音好きなんだよ。
YOCO: 見た目はV系だけどね(笑)
MAIYA: よく言われるよ(笑)。ここ1・2年ぐらいヘアモデルも仕事でやってるから勝手にモードなヘアスタイルにされるんだよ(笑)。
ーilliomoteを続けてきて、今まで印象に残っている出来事はありますか?
YOCO: illiomoteのデジタルリリースとかするもっと前の話になっちゃうんですけど、MAIYAちゃ んのお父さんが群馬に住んでいて、MAIYAちゃんのお父さんもミュージシャンなので高校の頃か ら演奏を観てもらったり、色々と教わりに行ったりしてたんですけどその延長線上で紹介しても らったとあるラッパーがいるんですけど、それまで私たちはラップっていうものにそんなに触れて こなかったのでカルチャーとしてあまり理解できてなかったんですけど、その人のライブを見た 時に、ラップの言霊がすごすぎて、ラップが好きな人は言葉のパワーを浴びに行ってるんだな~って感じて。気づいたら私は”ツー”って涙が流れてたんですけど、横を見たらMAIYAちゃんも同じよ うに泣いてて、ラップが私たちの心に刺さりまくった思い出がとても印象的です。でもその後、他のラッパーに「お前のはラップじゃねぇ」みたいな感じでディスられてたよね(笑)。
MAIYA: ヒップホップっていうよりはレゲエっぽいピースフルなマインドのラッパーだったよね(笑)。 確かに2人で泣いたね。確かにあのパフォーマンスはすごかった。
ー意図せず2人が同時に泣くっていうのは稀有な体験ですね。MAIYAさんが印象に残ってる出来事は?
MAIYA: 私はilliomoteの”In your 徒然”っていう楽曲のMVを2人だけで制作したのが印象的ですかね。 その当時、私はおばあちゃんの家に住んでいたのでそのおばあちゃんの家を2人で走り回ったりお ばあちゃんの服を着たりして、動画編集も”iMovie”で制作したのがバレバレのMVを2人で作ったの もめちゃく楽しかった思い出ですね。
ー最後に、今後illiomoteとしてやってみたいことはありますか?
MAIYA: 今年の夏に”FUJI ROCK FESTIVAL”の苗場食堂のステージに出演させてもらったんですけ ど、やっぱり次のステージにも立ってみたいと思ってます。レッドマーキーとか、もちろんその先 のもっと大きなステージにもilliomoteで立ちたいなって思いますね。他にもサマソニや、森道市場 みたいな大きなフェスにもたくさん出れるように頑張りたいと思います。
YOCO: 私のやってみたいことは、実は今までilliomoteは楽曲のリリースはSingleかEPしか出して いなくて、フルアルバムっていうのを出したことが一度もないので近い将来フルアルバムを出して みたいですし、昨年末に初めて代官山UNITでワンマンライブを開催したんですけど、その先のワ ンマンライブやイベントもどんどんやってみたくてワクワクしてるんですよ。他にも何かテーマを 決めてコンセプトEPとか出しても面白そうだと思ってて。例えば2人でどこか旅をしてその先で得 たインスピレーションを基に一枚のEPを出すみたいなことをしても良さそうですよね。いつもアー トワークでお世話になっているモンスターアーティストのTOMASONさんともモンスターを絡めて また新たな取り組みとかもしてみたいですし。illiomoteがまだやっていないことはどんどん実現さ せていきたいですね。個人的には日頃から絵を描いているのでilliomoteのマーチャンダイズのグラ フィックも作ったりしているんですけど、いつかちょっとしたライブもありの絵の個展なんかも やってみたいなって思ってます。やりたいことがいっぱいあるので今後のilliomoteも楽しみにしててもらえたら嬉しいです。
LE HALLES PAINTER : ROYAL
LE HALLES PAINTER : LAVENDER
illiomote @illiomote
(L → R) MAIYA / YOCO
幼稚園からの幼馴染みである YOCO(ヨーコ/Vo,Gt)と MAIYA(マイヤ/Gt)からなる2人組ユニット。
「心の負の感情も、他人の心の負の感情も否定しない」“HAPPY POP”というスタンスを掲げて音楽を鳴らしている。
2019年3月にYouTubeに投稿した「In your 徒然」が、ロックからポップス、ルーツミュージックまで混ぜ合わせたNEOな楽曲センスと2人のHAPPYなバイブスが投影されたミュージックビデオ で突如話題となり、楽曲発売前にも関わらず「POPEYE」や「BRUTUS」などのカルチャー雑誌 やWEBメディアでピックアップされる。2022年7月には Spotifyのグローバルプログラム 「EQUAL」の7月度JAPANアンバサダーに選出。2023 年にはEP「HMN</3」をリリースし、FUJI ROCK FESTIVALに初出演。9月にはEP「I.W.S.P」をリリース。 11月24日には代官山UNITで初のワンマンライブ「PANIC HOUSE」を開催した。