ERな人 VOL.36 KENGO (Freestyle Basketball)

photo, text, edit by NAOKI KUZE

 

 1906に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で 様々な役割を持ち活躍する”ERな人達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。

 

ーバスケットボールに出会いはいつですか?

KENGO: 中学一年生の時ですね。小学校まで柔道をやってたんですけど中学校に柔道部が無くて、たまたま担任の先生がバスケ部の顧問だったという事もあって、スポーツ全般好きだったので「じゃあ次はバスケをやってみよう」っていう感じの流れでバスケ部に入部したのがバスケとの出会いですね。

 

 

いつも練習しているという駒沢公園のバスケットコートに着くと早速バスケットボールを取り出すKENGOさん。

 

 

ー格闘技から球技への転向は大きな変化だと思いますがその時の心境について教えてください。

KENGO: 率直にいうと柔道は競技をしていて身体的にめちゃくちゃ痛い事も多かったので「バスケは痛くない」って思ったのを覚えてます()。バスケはコートを走ったりするしんどさはありましたけど、とにかくバスケが楽しかったのもしっかり覚えてます。ただ僕は今でこそフリースタイルバスケで食べていけていますけど、当時の僕はスタメンに入れるほど上手いプレイヤーでは無かったし、口が生意気だったり性格も変わってるって言われるタイプの学生だったのであんまりチームに馴染めていなかったかもしれないです()。でもバスケ自体が楽しくて3年間辞めることなく続けることが出来ました。

 

 

 

ーではフリースタイルバスケットボールはどのような流れで始められたんですか?

KENGO: ちょっと長くなります()。中高一貫校だったのでそのまま高校にエスカレート式に進学することが出来たのでバスケ部にも入部をしたんですが、実家が神奈川の日産スタジアムの近くだった事もあって、ストリートバスケのコートにも通うようになって、部活とストリートのバスケの活動を並行して行うようになったんですよ。それとはまた別でROCKにも興味を持つようになってギタリストとしてバンド活動も始めるんですけど、その活動が楽しくて部活のバスケは辞めちゃったんですよね。でもバスケは好きだったんでストリートのバスケはしっかり続けていて。でもストリートのバスケのコートでいざプレイしても実力が全然通用しないんですよ。実際にストリートの大人のプレイヤーに言われた言葉なんですけど「中学高校のバスケもやり通せない奴がストリートで通用するわけないだろ。」って。僕としても悔しいので「そんなことねーよ!」って 突っかかってプレイするんですけど実際そんなことあるんですよね()。そういったことがあって部活のバスケにもちゃんと戻らないとなって思い直したことと、高2の時に父が亡くなった時に、 何か一つのことをやり切らないとダメだなって思って。「バスケだけは頑張って高校生活でやり切ってみよう。」って決心して、顧問の先生に何日も頭を下げに行って無事部活のバスケにも復帰させてもらえることになったんですよ。その頃からフリースタイルのバスケの大会にも出場し始め てたんですけど、顧問の先生もチームメイトも大会がある時は僕のスケジュールを優先してくれて部活休ませてくれて、大会に出場させてもらっていたので結果的にとても応援してくれていました ね。高校生活はリアルに週7以上でバスケをやっていたので本当にバスケ漬けの日々を過ごしてたと思います。ちなみに引退試合で部活のみんなと一緒にいれなくなるのが寂しくて一番泣いてたのも僕でした()

 

 

 

ー高校で部活とストリートのバスケを並行して活動していたのはとても珍しいですよね。ちなみに ゲーム形式のバスケと違ってフリースタイルのバスケはダンス的な要素も入ってくるので必要とされるスキルが違ってくると思うんですけど、どのようにしてスキルを身につけていったんですか?

KENGO: ストリートのコートに来た時に、ゴールが空いていればシュート打ちたくなるじゃないですか?でも誰かが先にコートを使っていてゴールが使えなかったら僕はフリースタイルをやりたくなるんですよ。フリースタイルバスケのルーツに詳しい訳じゃないんですけど、誰かがコートを使ってる時に邪魔にならないようにコートの外でボールで遊んでたところに誰かが音楽を流して、 その音楽にバスケのスキルを乗せていったのが始まりだと思われるんですけど、僕もそんな感じでストリートバスケを始めた頃からフリースタイルバスケの門も自然とくぐっていて。ゲームする 時は真剣にゲームするし、ゲームが終わればフリースタイルを楽しむっていう感じで。

ー”Intercollegiate Freestyle Basketball Championship”をはじめ様々な大会で輝かしい結果を残されていますよね。

KENGO: 大学生の日本一を決める大会で4回優勝することが出来ました。大学一年の時に優勝した時のスピーチで「4連覇します!」って調子に乗って発言しちゃったんですけど、3連覇までは出来たんですけど、4回目が優勝できなくて。でも僕は大学を5年通ってしまったので5回目の大会で無 事4回目の優勝をすることが出来ました()

ー大学を5年通ったことはさておき、4回も優勝をすることが出来たのはとんでもない記録ですよ ね。

KENGO: 大学は駒沢大学に進学したんですけど、中高一貫校だったんで友達の作り方がわからなくて、ストリートでストイックにバスケしかやってこなかったんですよね。大学時代は授業とアルバイトと寝食以外は、今日も撮影してもらっているこの駒沢公園のバスケコートでず~っとバスケ してました。それに地方のフリースタイルの大会にも出てましたし、海外の大会にも招聘されるようになっていたので、そのせいで大学の単位が足りなくなり...()。大会でも結果が付いてきて、 スキル面でもどんどん上手くなっていってる実感もありました。人生で一番バスケにのめり込んでいた時期だったと思います。大学時代はコロナ禍でもあったのでリモートで授業を受けてバイトして、夜中にコートにきてバスケをしていたので、こんなに絶望的な世の中でも、夜中にストイックにフリースタイルバスケをしに来るぐらい自分はフリースタイルバスケが好きなんだなって気付いた時期でもありましたね。

 



ーモデルや企業の広告などのメディアに出演され始めたのも大学生の頃からですか?

KENGO: そうですね。フリースタイルバスケを絡めた案件が多いんですけど、たまにボールを持たずにモデルや演技をする機会もあってそれもめちゃくちゃ楽しいんですよね。僕は今25歳なんですけど10年もバスケをやっていると「上手い」って言われるのは当たり前でそういうことにワクワ クしない自分もいて、今まではボールがないと人権がないぐらいに思ってたんですけど()、ボールがないような環境のお仕事に挑戦させてもらえるのはめちゃくちゃフレッシュなんで緊張感も ありますけど自分の可能性の広がりも感じられるのでとてもやりがいを感じてますね。

 

キャップ (flatlux) / ニット (flatlux) / ペインターパンツ (SMITH’S) ¥17,600 / ローファー (Kenford)

 

 

 

ー今後は色々なことに挑戦してみたいということですか?

KENGO: 今は自分の中で新たなフェーズに突入をしていて、独学で撮影と制作の勉強して、最近は 僕の中での新たなアウトプットとして映像制作の仕事もさせてもらっているんです。仲間も多いのでバスケを撮影することは多いですが、最近だとマラソンの撮影やatomosの広告を制作させてもらったり、バスケに囚われず色々と映像制作させてもらってます。

ー新たなフェーズに入ったきっかけとは?

KENGO: プレイヤー以外の目線でシーンに向き合う必要があるなと感じたからですね。今までは プレイヤーとしてシャカリキに活動してきていたんですけど、「フリースタイルバスケをやってる」っていうと大会で優勝した話だったり、技術面で宙返りを何回したからスゴイとか、そういったスポーツ的なことばかりが注目されがちなんですけど、そういった局面に僕はずっとモヤモヤしていて。フリースタイルバスケの魅力はそういった記録や技術だけではないので、フリースタイルバスケのカルチャーをより多くの人に伝えられるようにもっと広い世界にアウトプットして いきたいっていう想いと、シーンをもっともっと盛り上げていきたいなっていう想いがずっとあったからなんです。

 

 

ー今後挑戦してみたいことはありますか?

KENGO: 目下挑戦中なんですけど、フリースタイルってバスケだけじゃなくてサッカーのジャンルもあって、フリースタイルはそれぞれ1人で完結出来てしまうので協調性のない人が比較的多いんですけど、そんな協調性のないフリースタイルボーラーの大人8人が集まって本気でチームを結成して”MONSTER BALLAZ”というチームで活動をしているんです。今年の夏に日本予選を勝ち抜いてアメリカの”World of Dance”という大会のファイナルに挑戦しに行ったりもしていて、このチー ムでの活動を頑張りたいと思っています。フリースタイルは1人で完結してしまうので個人単位で 有名になることはあっても、今までチームで活躍するっということがなかなか無かったので、新らしいフリースタイルのカルチャーを知ってもらうことができるきっかけにもなる活動だと思って いるので、個性の強いメンバーの集まりなのでまとめるのがとても大変ですがより積極的に活動を出来たらなと思っているので今後の活躍を楽しみにしてもらえたら嬉しいですね。個人として はキャリアも長いので最近は子どもたちに教えることも多いので、ディレクションから撮影、制作までもちろん僕が担当して、教えた子達を集めて作品を作るのも近いうちやってみたいと思っています。

 

 

 

 

 

KENGO @ken5_fsbb
Freestyle Basketball バスケットボールを使った自由な表現、競技であるフリースタイルバスケットボール、日本が最先端のカルチャーであり、高校生から始め今年で10年のキャリアを持つ。 今まで数々の賞歴を重ね大学生日本一決定戦“FBC International Freestyle BasketballChampionship"においては4度の優勝を手にし、そのほかにも日本全国で行われている大会にて、 優勝、好成績を残す。 日本だけでなく、世界的にも注目を集め、世界大会や国際大会にゲスト選手や審査員としても招 待、2022年には台湾で行われた大会にて優勝、現在でも多くのバトルに参加している。 フリースタイルシーンだけでなく、現在モデルや、映像制作などの活動も行っており、ブランドと のタイアップ、CM出演など、フリースタイルバスケットボーラーとしてさらに活動の幅を広げている。最近ではフリースタイルボールクルー"MONSTER BALLAZ"に加入し、世界的なダンスコンペティション"World of Dance"日本大会にて2位になり、世界大会に出場。チームでの活動も行っている。