ERな人 VOL.34 TOMASON (モンスターアーティスト)
photo, text, edit by NAOKI KUZE
小伝馬町から徒歩5分ほどのところにあるホテルBnA_WALLのエントランスを潜ればTOMASON LANDの一端を垣間見ることが出来る
1906に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で 様々な役割を持ち活躍する”ERな人”達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。
ー”TOMASON LAND”とは一体何なんですか?
TOMASON: 僕は12年間毎日オリジナルのモンスターを描き続けていまして、そのオリジナルのモンスター達の世界観に入り込めるような体験が出来る、体験型アート展示のことを”TOMASON LAND”と呼んでいます。
ーなぜ体験型というアートの展示方法を取られているんですか?
TOMASON: 僕が描くオリジナルのモンスター達には全て名前とキャラクター設定を持たせているので、モンスターをより身近な存在として感じてもらえたら良いなと考えた時に、実際にモンスター達の世界に入り込んでもらい、僕自らがモンスターの解説をしながらお客さんと”TOMASON LAND”内を巡り、モンスターたちと直接触れ合ってもらうのが一番最善の方法なんじゃないかって考えたんですよ。いわばディズニーランドやUSJ、サンリオピューロランドのようなテーマパー クのようなものって子どもから大人まで楽しめるし、キャラクターたちと触れ合って楽しめる最 たるコンテンツだと思うんですよね。僕の作家性からしても一番追い求めている要素でもあるので、そんなテーマパークのイメージを手作りしてしまったのが”TOMASON LAND”なんですよ。めちゃくちゃ大変ですけど(笑)。
ー”TOMASON LAND”の取材を通して感じたことですが、TOMASONさんの作品にはたくさんのご友人やボランティアの方々が参加をされていて、いわゆる雑用的な作業じゃなく展示作品のペイントまでそういった方々に和気藹々と手伝ってもらっているのがとてもユニークだと感じました。正直、世のアーティストのほとんどの方はアシスタントではない限り、自身の作品のペイントを任せることをされないと思うのですが、その意図を教えてください。
TOMASON: そもそもの話なんですけど、今回の”TOMASON LAND”というイベントは完全に自費制作をしているので金銭的にアシスタントを雇う余裕が全くないということが大前提としてあるんですよ(笑)。ただこの広い空間で1人で作業をするのはとても困難なので、友達に頼ったり、今だとSNSがあるのでインスタグラムのストーリーズでボランティアの方々を募らせていただいた次第ですね。ただ僕のマインドがちょっと変わっているのか、モンスター達を友人やボランティアの方々にいざ描いて貰う時に、先に最低限の下書きは予めしてあるのでその上から指示をして描いてもらったとしても、それでも絵に違和感が生まれてしまうことはあるんですよ。でもそれはそれで良いことだと僕は思っていて。もちろんこだわりが無いというわけでは無いので、制作するにあたって僕の中の決められた法則から逸脱さえしていなければ大丈夫かなというスタンスです。それに僕は以前から僕が描いたモンスターを立体の作品として発表するときに陶器であれば”BANBI YAMAMOTO”、スズランテープを編み込んだ人形であれば”KIMIE TAKANO”という2人の作家に制作を依頼をしていて、自身が生み出したモンスターに他者の感性が交わって想像を超えたクリエーションが出来る瞬間がとても好きなんですよ。あとは”TOMASON LAND”の裏テーマとも言えるんですけど、”大人の文化祭”とも考えていて。この大きな空間で僕1人では展示まで漕ぎ着けるのは 無理なので、お金が無いなりに人を集めて一つの目標に向かって一丸となってやり遂げるっていうユナイト感も楽しんでいるんですよ。ありがたい話で開催まで本当にたくさんの友人やボランティアの方にサポートしてもらったんですけど、色んな人が加わることによって毎日色んな予期せぬドラマが生まれましたし、それも楽しくて色々な人を巻き込んでいる節もあります(笑)。色んな ストーリーが作品の一部として”TOMASON LAND”には息づいているので来場者の方にはそういった側面も楽しんでもらえたらなと思っていますね。
今回のインタビューでは制作途中から取材撮影をさせていただきました。
今回の”TOMASON LAND”では20名ほどのボランティアが都外からもTOMASONの元に駆けつけ、 まさに大人の文化祭の制作のサポートしてくれた。
ー今回の”TOMASON LAND”の見所を教えてください。
TOMASON: 今まで出来なかったことに今回挑戦していて、センサーなども用いて人が通ると反応してモンスターが動かしたり、しゃべったり、光ったりしています。人が操作をするのではない仕掛けを今回は実現することができたのでそこは見所のひとつですね。あとは今回も会場自体はとても広いのですが、過去の”TOMASON LAND”の会場と比べると使用できるスペース自体は少しコンパクトではあったので、いかに会場を無駄なく楽しい空間にできるように迷路のように空間を進むことが出来る会場の設計になっているところも楽しんで欲しいです。3つ目は来場特典としてあるお面をお配りしているのですが、どの空間を切り取っても”SNS映え”を意識して制作をしているので是非お面を被ってたくさん記念写真を撮ってもらって、”TOMASON LAND”を出た後もSNS で投稿して楽しんでもらえると思いますし、「”TOMASON LAND”行ってきた!」って友達に自慢しまくってもらいたいですね(笑)。
ドローイングブルゾン (TOMASON) / Tシャツ (TOMASON) / ペインターパンツ (SMITH'S) ¥29,700 / スニーカー (adidas ORIGINAL)
TOMASONと大勢のボランティアの方々の手により無事に設置完了。
“TOMASON LAND”へはBnA_WALLのエントランスに設置された巨大アートタペストリーを目印に。
ーTOMASONさんはなぜモンスターを描き続けているんですか?
TOMASON: それこそ幼稚園とか物心ついた時から描いてた気がするんですけど、僕はデッサンとか模写のように決められた物を描くのが苦手なんですよ。その反面、正解のない空想の物を描く方が僕には合ってるんですよね。小さい時から僕の周りには絵の上手い人がいっぱいいましたけ ど、僕は好きなものを好きなように描くのが得意で。幼い時に好きだったモノも”水木しげる”の妖 怪や”遊⭐戯⭐王”に出てくるデュエルモンスターズだったりキャラクターが好きで。しかもヒール側のキャラクターが結構好きだったんですよね。他には”ティム・バートン”とかみたいなアメリカのカートゥーンも大好きだったんですよ。意外とロボットとか無機物っぽいキャラクターには正直興味が薄いんですけどとにかく昔からキャラクターフェチで。そんな趣味を持った少年TOMASON は誰に見せるわけでも無く空想のキャラクターをたくさん描き続け、小学生になっても変わらず 描き続けていたって感じですかね。ただ中学とか高校になると僕も一男子としてモテたいと思って絵を描いたりすることから少し離れてしまうんですけど、高校の部活を引退してやることがな くなった時にこれからの人生で自分は何をやりたいんだろうって思った時に、昔はずっと絵を描いていたなっていうことを思い出した時にビビっときてデザイン系の大学に進むことを選んだんです。その大学では色々と苦戦するのですが、僕がやりたいのはオリジナルの”作品”を作ることだったんですけど、大学では”デザイン”をしなければならず、課題を提出しなければいけない場面でも僕は課題の”デザイン”ではなく”作品”を提出してしまったりして、「お前が提出しているのは”課題” では無く”アート“だ!」って先生にもたくさん怒られました(笑)。今でこそ怒られて仕方ないことをしていたのはわかっているのですが、当時の僕はやりたいことができないそのフラストレーションから、じゃあ自分が本当にやりたいことをするためのプロジェクトを自ら立ち上げるしかないなと決心してそこから”TOMASON”と名乗ってモンスターを描き始めたのが12年前なんです。 モンスターしか描けないから今もモンスターを描き続けているんだと思います。
ーTOMASONさんにとってモンスターとは?
TOMASON: 僕にとってモンスターはコミュニケーションツールにもなっていますね。それは最近 すごく感じていることで、モンスターを描き続けてきたからこそたくさんの人と繋がれたし、そ の瞬間瞬間で僕が見てきたこと、思っていること、感じていること、好きなこと、表現したいことがモンスターに詰まっていて、そのモンスターを観てくれた色々な人が、モンスターを通してメッセージを受け取ってくれてその人たちと繋がれれいるんですよね。僕にとってモンスターは言語すら凌駕するコミュニケーションなんですよ。
ー今後挑戦してみたいことはありますか?
TOMASON: あります。トレーディングカードを作りたいです!幼少期から現在も集めている”遊⭐ 戯⭐王”や、ポケモンのカードがルーツなんですけど、現在僕は少なく見積もっても8,000体のオリジナルモンスターを生み出していて、それぞれのモンスターに名前やキャラクター設定が設けられている中でどのような形にすれば沢山の人にその魅力を届けられるかなと考えた時にやっぱりカードは手に取りやすい物ですし、アート性とも両立できるコンテンツだと思うのでアテがあるわけではないのですがいつか実現させたいです。あともう一つは、今年の頭から毎日描いている モンスターとは別に、ナンバリングしてモンスターも描いていまして、そのナンバリングが No.20,000まで到達するまで描くことを目標に取り組みを続けています。No.20,000まで描き切った先にどんな景色が広がっているのかをみたい好奇心と、世界的にみても名前と設定を持たせた キャラクターを20,000対も生み出した人ってそうはいないと思うんですよね。なので描き切った暁にはギネス記録の申請もしてみたいとも思っています。あとは自主制作としての”TOMASON LAND”はおそらく今回が最後にしようと思っているのですが、いつか僕が生み出したモンスター をちゃんと企業さんに入ってもらってプロダクトにしてもらい、本物のテーマパークみたいなアトラクションもある”TOMASON LAND”を建国することが究極の最終目標ですね。とはいえ、まずは今回の”TOMASON LAND”に是非足を運んで欲しいです。これだけの大掛かりな制作にも関わらず、作品の性質上会期が終われば取り壊さなければならない儚さもあるんですよ。期間中は僕が基本的には在廊しているので、僕と沢山の人たちに協力してもらって作り上げることが出来た体験型アート展示イベント”TOMASON LAND”のパッションと儚さを是非体験してもらえたら嬉しいです。
岐阜 - 東京 - 岐阜 - 京都 から続き5回目の開催となる今回のTOMASON LANDでは このエントランスゾーンから一気に”TOMASON LAND”の世界に引き込まれることになる。
TOMASONのモンスターの中でも人気の高いヤーマンネイチャーとスピークガイとの撮影が出来るコーナーも。
“チャーチルロビッツ”と”ナチョスドギー”の口の中に進んだその先には?
TOMASONのアトリエの世界が広がっている。
今回の”TOMASON LAND”の主役のモンスターの巨大な”ルーツ”に乗ることが出来る。 この空間ではある仕掛けがあり、是非実際に足を運んで体験してほしい。
「WISH FOR MONSTER LEGACY.」が意味することとは?
最もSNS映えするであろうインフィニティールームは”TOMASON LAND”の中でも特に人気の高いエリア。
今回の”TOMASON LAND”の設営を支えた主要メンバーの1人がモンスター化した ”トントン”と”ルーツ”も会場のどこかに隠れているので見つけてみよう。
TOMASON @new_tomason
モンスターアーティスト
岐阜県出身 地元岐阜県を中心にアートフェスや個展、ワークショップ等を開催する。 2011年から毎日独自のモンスターを描き続けている。 2019年10月から表参道にて自身のギャラリー“MAT”をオープン。 2020年に出版レーベル“白い立体”からオリジナルモンスターをまとめた 図鑑をリリース。
an artist
from Gifu Pref.
around his hometown Gifu,
holds art festivals, workshops, etc...
has been drawn unique monsters everyday since 2011
TOMASONオフィシャルHP http://tomason.jp
YouTubeチャンネル”TOMASON MOVIE” https://www.youtube.com/@tomasonmovie5883/ videos