ERな人 VOL.33 海帆 (表現者)

photo, text, edit by NAOKI KUZE

 

 

1906に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で 様々な役割を持ち活躍する”ERな人達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。

 

ー海帆さんはどのような活動をされているんですか?

海帆: いつも一言で説明できなくて困ってるんですよね()。ダンサー、俳優、モデル、アクロバッ ト、たまにバリスタもやるよという感じです。なので何でも屋さんといえば何でも屋さんなので すが、ちょっと自分で言うのは小っ恥ずかしいところもあるんですけどマインドとしては表現者という呼び方がしっくりきますね。

 

 

ーなるほど、それでは”表現者”としての活動について順を追って聞かせてください。ダンスとの出 会いはいつ頃だったんですか?

海帆: 元々私は学生時代はオリンピックを目指して器械体操の選手として活動していたんです。器械体操は女子だけの種目の中で曲に合わせてダンスをするんですけど、私はそのダンスをするところがとても好きだったんですよ()。選手時代に知り合いからシルク・ドゥ・ソレイユに誘われたこともあって、個人的にはそんなエンターテイメントの世界への憧れもあったんですけど、 当時はまだオリンピックを目指して頑張っていたこともあってお断りしてしまったんですよね。でも結局オリンピックに出場することは叶わず長年続けていた体操を大学進学をきっかけに辞めてしまいました。子どもが好きなので大学では保育士の資格が取れる学部に入ったんですけど、今まで体操に日々の生活を捧げていたこともあったので、アルバイトして、授業終わりにサイゼに行って、カラオケに行って、サークルに入って、飲みに行って、彼氏を作って、みたいな感じで絵に描いたような華のキャンパスライフを満喫してみようと思ったんですよね()。そして色々とサークル調べた中でダンスサークルに遠藤時代のメンバーの方がダンス講師をされていることを知ったんです。

 

 

 

ー”遠藤時代”というと少女時代のダンスをカバーしていたことで有名なプロダンサーのグループですよね?

海帆: そうです。個人的に遠藤時代が好きだったこともあり「このサークルに決めよう!」って思ってサークルに所属することになりました。高校生までは週6の練習でオフの日も食事制限があったのでオフだからといって気を抜くことが出来ない日々を過ごしていたんですよ。だから大学のサークルではゆるくダンスを楽しもうと思っていたんですけど、サークルにはダンス経験者がほとんどですし、上手い人も多かったことと、私自身も思った以上に負けず嫌いだったみたいでサークルの活動の前後の時間にめちゃくちゃダンスの練習をするようになったんですよね()。そうなってくると外部のダンスレッスンにも通うようになってきて。あと明確にダンスにハマるきっかけが、 大学の専攻のひとつに舞踊学専攻と言うものがあったんですけど、文化祭の時にその舞踊学専攻の生徒によるパフォーマンスを観たんですけど、私と同い年ぐらいなのにみんなとてもダンスが上手くて。正直サークルの人たちよりもダンスのレベルも高かったことに衝撃を受けてしまっ たんです。私はその頃にはダンスが一番上手くなりたいと思っているぐらいダンスにのめり込んで いたので、憧れと悔しさもあって「学部移っちゃおうかな」って思って先生に相談して、手続きを手伝ってもらって本当に学部変えちゃったんですよ()。保育士にならなくてもダンスが上手になれば大好きな子どもにも教えることも出来るようになるしなと思って。そこから様々なショーケースに出演したり、映像作品に参加したりとダンサーとしての活動もスタートしていきました。

 

ーアルバイトはその頃からバリスタに?

海帆: そうですね。学生時代は渋谷のカフェで働いていて、現在は新宿のカフェでスケジュールの空いているところでバリスタを続けています。今のような活動をしていると、急な仕事やオーディションが入ったりすることも多く、バリスタが出来るお店もなかなか見つからなかったりするのですが、今働いている”4/4 SEASON’S COFFEE”のオーナーは、コーヒーも表現のひとつだし、お客様とも仲良くなってほしいから、ダンスや演技などをしている引き出しがある人の方が面白くて良いよねって言ってくださって、それであまり働けない時もあるんですけど、ありがたく在籍させてもらっています。学生時代から数えると約10年ほどバリスタもやっているのですが、ダンスにも共通して言えるところがあって、答えのない探究心を持って取り組むことができるカルチャーが好きなんだと思いますね

ーではダンスやバリスタの活動以外に、モデルや俳優のお仕事も現在はされていらっしゃるとのことですが、どういったきっかけで?

海帆: モデルに関しては、正直私は特別に身長が高いわけでもないし、細くもないし、かわいいとも思っていないんですけど、そんな私でも良いんだったら喜んでやらせていただきます!って感じです()。なのでモデルの仕事を個人的にプッシュして活動をしているわけではないんです。でも オファーをいただけることも多いので、その際は私なりに精一杯お取り組みさせていただいてい ます。俳優に関しては、ダンスの案件だと思って受けたお仕事やオーディションが俳優の仕事だったって言うところがきっかけですね。初めてCMの案件で受けたポカリスエットのオーディションがあったんですけど、オーディションではめちゃくちゃダンスを踊らされたんですけど、ありがたくオーディションを通過することが出来て、いざ本番を迎えたら1ミリもダンスがなく演技だけだったこともありました()。しかも4人の女子高生がフェスを作るっていうシナリオだったんで すけど、私以外の3人は16歳ぐらいのぴちぴちのリアル女子高生の俳優さん達に混じって、当時22歳だった私も女子高生を演じさせてもらいました()。初めは俳優の仕事をやろうって言うふうに は考えていなかったんですけど、ダンスで感情表現をすることは得意だったし、そういった部分を評価してもらってMVや映像、舞台のお仕事につながっているんだと思います。

 

 

ーここまでのお話を聞いていると、きっかけこそ偶然のものもあったかもしれませんが、海帆さんが今まで一生懸命取り組んできたことが活動を通して自然と広がりを見せているんでしょうね。それぞれのお仕事でアプローチが違うとは思いますが、”表現”をしているときにどのような喜びを感じますか?

海帆: “表現を通して人の心の動きを目の当たりにする瞬間が気持ち良いというか、嬉しいですね。 ダンスだったら私のダンスを観たオーディエンスを楽しい気持ちにさせたり、切ない気持ちにさせたり、「やる気出たよ」とか「パワーもらいました」みたいなオーディエンスが日常に戻った時の頑張る活力になっていたら本当に幸せですね。私は喋るのが上手じゃないんですけど、もし喋るのが上手ければ歌を歌ってたのかな思うんですけど、私の感情とか気持ちを伝えたいがためにどんどん表現方法が増えていったと思っています。今の私はダンスや俳優やアクロバットやバリスタやモデルって言うアウトプットの中で過ごしていますが、今後その私の感情や気持ちを伝えるた めの表現方法はもっと増える可能性もありますし、逆に絞られていく可能性もありますね。あとは私が取り組んでいる仕事に対して、いつも応援してくれている家族や一緒にいる仲間や友達が自分のことのように喜んでくれている時もたまらなく嬉しい瞬間ですね。

 

 

ー家族や仲間が喜んでくれるのは幸せですよね。実際に印象に残っているエピソードはありますか?

海帆: 特別印象に残っているのは東京オリンピックの閉会式のパフォーマンスに出演させていただいた時ですかね。やっぱりリアクションも凄かったですね。オリンピックなので出演するまで本当に誰にも言ってはいけない守秘義務があったので周りにもオリンピックの閉会式に出ると言うことを言わずにいたのにも関わらずやっぱりオリンピックなんでみんなテレビで観ていたらしく、観てた人は「海帆出てたね!すごいね!」ってみんな気付いて喜んでくれてメッセージもたくさん届きましたね。個人的にも元々器械体操の選手としてオリンピックを目指していた人間なの で、まさかダンスと俳優の仕事をしてきたからこそ繋がったオリンピックの閉会式のパフォーマン スの出演だったので私の人生の中でも大きな出来事でした。ダンスだけやっている人では絶対に出演できない内容でしたし、演技だけやっていた人でも出演できない内容だったので、出演が決まった瞬間は思わず泣いてしまいましたね。

ー今まで頑張ってきた活動のピースが一つに繋がった瞬間ですね。今後新しく挑戦してみたいことはありますか?

海帆: ニューヨークに留学へ行きたいなと思っています。長年バリスタをしてきたこともあってフ ランクな英語は話せるようになったんですけど、より仕事でも活かせていけるようにしっかり勉強したいなと思ってます。ロサンゼルスの方がダンスなどのカルチャーは強いのですが、ショーのカルチャーを勉強するならやはりニューヨークだと思うので。留学中にニューヨークでもステージに立ったり何か仕事が出来たらなとも思ってます。あと最近考えるようになったんですけど、自主公演を近いうちに実現できたら良いなと思い始めてます。自信がなくて考えてこなかったんですけど、誰かのステージのダンサーで出演していても私が主役じゃないとやっぱり友達とか、私のことを気にかけてくれる人が観に来づらいと思っていて。私の自主公演であれば私のダンスや演技を観たことがない人も来やすいと思うので。最近友人のミュージシャンがWWXのステージでライブをしていたんですけど、身近な仲間がWWXの箱を観客でいっぱいにしていて、その光景に感動しちゃったんですよ。イベントを組んだりすることは私は苦手なんですけど、あの素晴らしい光景を自身で作ることが出来るなら自主公演を成功させるためにも頑張れるかなと思えるようになっ て。これからもまた表現を通じて新しいことにどんどんチャレンジしていきたいです。

 

ジャケット (USED) / フーディーベスト (USED) / ロングスリーブカットソー (USED) / ペインターパンツ (SMITH’S ) ¥17,600 / レザーシューズ (ROSE BUD)

 

 

 

 

 

 

海帆 @____miho_u
表現者
ゲスの極み乙女、三代目
J SOUL BROTHERS、他多数のアーティストのライブバックアップのダンサーを経験。その他にもMVCM等多数のメディアにも出演中。
また、
JOURNAL STANDARDをはじめとしたファッションブランドのモデルも数多くこなしている。 現在、俳優として演技にも力を入れており、型にはまらない感情を揺さぶる表現を武器にマルチに活動している。