ERな人 VOL.32 BANANA (Human Beatboxer)
photo, text, edit by NAOKI KUZE
1906に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で 様々な役割を持ち活躍する”ERな人”達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。
ーヒューマンビートボックスとの出会いはいつですか?
BANANA: 小学5年生ぐらいの時にテレビ番組で”ハモネプ”っていうのが放送されてて、その番組で は”ボイパ(ボイスパーカッション)”って言われてたんですけど、その番組を観て見よう見まねでやってみたら「意外と出来そうかも」ってなったのがヒューマンビートボックスとの初めの出会いです ね。
ー20年ぐらい前の話ですが当時とても番組が流行っていましたよね。
BANANA: そうなんです。僕の小学校でもとても流行っていて、ヒューマンビートボックスをやっ てみようかなって思っていたら、3人の同級生がもう先にヒューマンビートボックスを始めてたんですよ。それで僕も仲間に入れてもらったんです。小学生の時は元々休み時間はドッジボールとかキックベースをやるスポーツが大好きな少年だったんですけど、ヒューマンビートボックスと出会ってからは僕を含めた4人の同級生でどんどんその魅力にハマっていき、技を披露したり教えあったりして過ごしてました。
ーめちゃくちゃイケてる小学生ですね。
BANANA: 音楽やっている人の中ではあるあるだと思んですけど、「カッコイイしモテそうだな」って気持ちは正直ありました(笑)。ただ4人組の中では実は僕は始めるのも一番遅かったので一番下手だったんですけど、カセットテープのデッキに安いマイクを繋いで、自身のプレイをテープに録音して、ちゃんと口で音が作り出せているかをチェックしたりして沢山練習してました。
BANANAさんは愛用するマイクは”ORB”。数多くのミュージシャンから根強いファンが多い。
ーそこからライブなどで披露されることになるのはいつ頃ですか??
BANANA: 初めてのライブは中学3年生の時ですね。メンバーの1人がキリスト教に入っていたのか出入りしていただけなのかは分からないんですけど、そのキリストの教会の中で歌無しの完全にビートボックスのみのライブをしたのが初ライブですね。実はこの初ライブにはちょっとしたエピソードがあって、中学2年の時に日本のヒューマンビートボックスのパイオニアであるAFLAさんのライブに初めて行った時に、自分たちでMDに録音したヒューマンビートボックスの音源を 「AFRAさんに届けてください!」って関係者に渡したら、まさかのAFRAさんから「楽屋においでよ」と招待してくださったんですよ。すると楽屋にはその日共演されていたスチャダラパーのBOSEさんやシンガーのAIさんもいらっしゃって、そのまま皆さんと楽屋でセッションさせてもらえるという夢のような体験をしたんですよね。そこからAFRAさんとは交流させていただくようになって、スペースシャワーTVでAFRAさんが持っている番組内で、僕たちの教会での初ライブの音源を流してくださったりして本当に色褪せない良い思い出で。ちなみに2週間前ぐらいにイベントでAFRAさんに会った時にもこの時の話をしてましたね(笑)。この一連の体験があったからこそ本気でヒューマンビートボックスをやろうと思ったし、僕にとってAFRAさんは一番リスペクトしている人なんですよね。
BANANAさんのトレードマークはなんと言ってもフラットトップのヘアスタイル。
奇抜な見た目が功を奏しモデルやCMなどに呼ばれることも多いそうでヘアスタイリングにはVO5が一番いいとのこと。
ー中学生でとんでもない出会いや体験をされたんですね。高校時代もすごそうです。
BANANA: 高校生の時はちょっと周りの環境に流されてしまったこともあって、ちょっとだけヤンチャをしてしまって高校一年生にして卒業が出来ないような状況になってしまいました。じゃあ 「ビートボクサーで食っていくよ」ってことで学校を辞めることになりました。僕の地元が平塚なんですけど、「本気でビートボックスで食っていきたいなら俺に連絡しろ」と言ってくださっていたビートボクサーの先輩がいて、その先輩が日本で初めてのビートボックスのバトルイベントの主催もされてたんですよ。それで自分も初めてバトルに出場させてもらったら一回戦で敗退してしまうというバトルの洗礼を受けてしまったんですよね。それがもう悔しくて悔しくて。でも自分としては「ビートボックスで絶対食っていきたい」って想いが強かったので、その先輩としばらく行動を共にさせてもらって勉強させてもらいました。ちなみに通信制で高校の卒業資格は無事取得してます(笑)。
ー20代に入られてからはNATURAL VYBZというビートボクサー3名によるバンドを結成し活躍されていらっしゃいますが、どのような経緯で結成されたのでしょうか?
BANANA: 僕がバトルで優勝するようになったりして、シーンでも名前が通っていたタイミングだったんですけど、僕がまたバトルに出場して優勝した時に声を掛けてくれたビートボクサーがいて、その人がのちにリーダーを務めることになるAKIOという人物なんですけど、意気投合して 「一緒にイベントをやろう」ということになり、NATURAL VYBZの前身のような形で僕+AKIO+ αの色々なメンツで中目黒でレギュラーイベントをするようになり、2、3年ほど経ったタイミングでチームとしてやっていこうということになり、2012年から正式にNATURAL VYBZを結成し、活動をするようになりました。その後は都内の活動をメインに様々なイベントに出演したり、ベース ミュージック世界最高峰のクロアチアのフェス”OUTLOOK FESTIVAL”に客演で参加させて頂いたり、NHKの番組で僕達の特集組んでもらったりとありがたい経験を積ませてもらっています。
ーそんな中でコロナ禍に入った2020年頃にNATURAL VYBZを脱退されたんですよね。
BANANA: ずっとシーンで活動してきたので、マインド的に自分の中で少し音楽とは距離を置く必要があって、トレードマークでもある髪の毛もフラットヘッドから普通の髪型にして一度普通に働いてみようかなと思っていた矢先に、NATURAL VYBZを専属で撮影してくれていたカメラマンの友人が、「勿体無いから良かったらアシスタントで制作手伝ってよ」って言ってくれたんですよ。 自分でも次の進路を全然考えていなかったことと、今まで撮られる側だったので、その裏方の仕事に興味もあったので制作クルーとして僕も加入をさせてもらいました。業務的にはスチール撮影やMV撮影のアシスタントから編集作業なんかをやってました。
ーとても大きな環境の変化ですね。
BANANA: 一度NATURAL VYBZから離れて、制作の仕事をさせてもらったことで多くを学ばせてもらってとてもありがたかったのですが、自分の中でビートボックスのおかげで体験することができた海外でのライブの高揚感を欲していることに気付いて、自分は刺激が必要な人間なんだと改めて気付かされたんですよ。そこで仕事などでマメに連絡をとってたAKIOと話し合って NATURAL VYBZのサポートって形で活動を再開したんです。
ー一度離れたことでビートボックスがBANANAさんにとってはなくてはならないことだと気付かされたんですね。復帰されてから活動に変化はありましたか?
BANANA: NATURAL VYBZとしての活動はより海外に意識を向けて活動するようになりました。 国内のイベントはベースミュージックのカルチャーのイベントに出演することが多いです。 YouTubeに投稿する動画は海外向けに制作したものを発信しています。海外のラッパーのボーカルだけ抜き出して、トラックを僕達のビートボックスにして乗せることで生でリミックスアレンジをしているようなライブ収録したりしています。
ー今後の展望を教えてください。
BANANA: NATURAL VYBZとしての活動の目標は海外のフェスに自分達の力で出演を勝ち取っていく事ですね。あとは個人の活動としては、自分の体で出来ることはなんでも挑戦していきたいと思っていて、撮影や制作の仕事は今もライブがない時は手伝わせて頂いてますし、今日撮影と取材に来て頂いたこの”PIZZERIA Naughty”は僕の先輩のお店なんですけど、「良かったら手伝わない?」って誘ってくれたので週に数回ですが手伝わせてもらってます。そのほかにもクラーク国際高等学校のパフォーマンス科で ビートボックスの先生なんかもやらせてもらったりしてるんですよ。コロナ禍に裏方の仕事を経験したことによって自分がプレイヤーとして活動するだけじゃなくて、作ったり、技術を伝えたり広めたりすることの大切さを学んだので、そういった活動をもっと増やせていけたらいいな思いますね。
小田急線・東海大学前駅から徒歩5分ほどの場所に”PIZZERIA Naughty”があり、地元民だけでなく、 ミュージシャン、スポーツ選手など様々なカルチャーの人々にも愛される人気店。
お手伝いなので基本的にピザを焼くことはないそう。
カーディガン (RAGEBLUE) / Tシャツ (Naughty) / ペインターパンツ (SMITH’S) ¥22,000 / スニーカー (VANS)
BANANA @bananaflattop
Human Beatboxer
湘南平塚出身のHuman Beatboxer。
数々の公式大会で好成績を残し、2012年には東日本チャンピオンに輝く。
持ち前の見た目のインパクトから、バラエティ番組、TV CM、アパレルブランドのモデルなどHuman Beatboxerの域に留まらず様々なフィールドでマルチに活動を行っている。
NATURAL VYBZ @natural_vybz
YouTube https://www.youtube.com/@naturalvybz_
撮影協力 PIZZERIA Naughty @pizzanaughty6