ERな人 VOL.31 大島 拓身 (Bon Vieuxオーナー / Out of Trad ディレクター)


 photo, text, edit by NAOKI KUZE

1906に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で 様々な役割を持ち活躍する”ERな人達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。

 

ーBEAMSで20年ほどのキャリアを積まれてから独立をされたようですが、元々ご自身でお店を持つビジョンなど持っていらっしゃったんですか?

大島 拓身 (以下大島): BEAMSに入社したての頃は、いつか自分のお店を持ってみたいなという夢は朧げではあるものの持ってはいたんですけど、そこからBEAMSで長く働いていく中で、個人の売上だけで勝負をしていくのは難しいことですし、自分には無理だろうなと感じるようになってしまったんですよ()

ーキャリアを積んでいったことで商売の難しさを感じられたんですね。ではそこからどのように独立への流れが生まれていったのでしょうか?

大島: 時代の流れも大きかったのですが、Instagramを中心にSNSの発信を積極的に行っていたこともありフォロワーがちょっとずつ増えていったんですよ。それで「イケるかもな」と思うようになってきて、副業で5年ほど前からオンラインでヴィンテージからオールド、現行品まで扱うショップをスタートしたんです。反応も上々だったのでどんどん自信もついてきて、2年ほどオンラインで運営をしたのちに、この場所でリアル店舗として土日限定でオープンするようになったんですけど、その頃にはBEAMSから独立することを考えて働いていました。

 

 

Bon Vieuxにはヨーロッパ物からアメリカ物まで大島さんならではのセレクトが光るヴィンテージアイテムがラインナップされている。

 

 

ーなぜこの場所でお店を開くことになったんですか?

大島: 上京した時にしばらく住んでいたのが荻窪だったんですよ。それでよく高円寺の古着屋に通っていたんです。その当時からの知り合いの方から、「お店が移転することになったからこの物件が空くよ」と教えてもらって。そのタイミングで「すぐに大島さんが使ってくれるならそのままこの物件借りれますよ」という美味しい話を頂いたんです。そのお話をいただいた時はまだ僕自身はお店を持つっていうことは具体的に考えてはいなかったんですけど、なかなか高円寺で物件が出ないということも知っていましたし、角立地の物件でロケーションも申し分ない条件でしたので引き継がない選択肢は無いなということでこの場所で”Bon Vieux”を開くことになりました。内装に関しては、内壁はDIYで仕上げましたが、元々あった什器を一部そのまま使わせてもらってい るので準備にそこまで手間取らなかったのも功を奏して、借りて1月ほどでオープンする事ができました。

 

Bon Vieuxは高円寺駅を出てすぐのパル商店街のアーケードを抜けた先にある。

 


ーオンラインからリアル店舗になった時の印象はいかがでしたか?

大島: 元々オンラインでやりたいとは思っていなかったのと、なんなら今でもオンラインは辞めたいとさえ思っているのですが()、直接お客様とコミュニケーションを取れることが何より楽しいんですよ。古着の世界ってモノに特化されがちで、例えば「リーバイスの〇〇」とか「何年代の ××」に価値があるんですよ~っていうふうにモノの蘊蓄で見られがちじゃないですか。もちろん洋服を楽しむ上でそういった側面を否定するわけではないですし洋服を語る上で大切な要素でもあると思いますが、僕はBEAMS時代にVMDを務めていたこともありコーディネートを人生で何万体と組んできた自負があるので、モノ単体で魅力を伝えるというよりかは、どちらかというとコーディネートでお客様とお話がしたいんですよね。オンラインではどうしてもそういったアプローチにも限界があるので、オンラインより直接お客様とコミュニケーションをとる事ができ る、この場所でお店が構えることができて本当に良かったなと思っているんですよね。

SMITH’Sにはアメリカントラッドを見たパリジャンが独自の解釈で生み出した、アメリカントラッドをより自由な着こなしで嗜んだフ レンチアイビーには欠かせないアイテムとして確固たる地位を築いた歴史があり、現代においてもドレスアイテムを用いた着こなしに も気取らずに合わせる事が出来ると大島さんは語る。
Bon VieuxにはSMITH’Sの代名詞でもあるUSA製のペインターパンツのリジットデニム・クラシックツイル・ヴィンテージウォッシュ・ ヴィンテージウォッシュペイントの4種類をラインナップしている。特筆すべきはペイントのモデルは本来のフレンチアイビーの合わせとしてはありそうでなかった組み合わせだったため、Bon Vieuxでは敢えてセレクトのラインナップに加え、コーディネート提案しているそう。

 

ー高円寺というエリアは古着屋が多いエリアですが、このBon Vieuxの強みを教えてください。

大島: そうですね。やはり先程お話したようにコーディネートの提案がしっかりと出来ること。そして最近ではオリジナルのアイテムでストールやバッグ、ネクタイなどもオリジナルで作っていたり、イタリアのドレスパンツメーカーのジェルマーノに別注したパンツを作ったりもしていて、新 品と古着、カジュアルアイテムとドレスアイテムをミックスしたコーディネートの提案ができるところは”Bon Vieux”ならではかと。正直ネクタイのことを語れる古着屋さんってなかなかいないと 思いますし、カジュアル~ドレスまでしっかりご提案できるのがウチの強みだと捉えています。

 

 

 

ー古着屋がオリジナルアイテムを作るとしても、リメイク物やプリント物のカットソーなど簡易的 なアイテムが比較的多い気がしますが、大島さんが作られるアイテムは独自の世界観をしっかりと築かれていますね。

大島: 新品を作るのは正直めちゃくちゃ楽しいんですよね()BEAMS時代に物作りをあまりしてこなかったので、独立してから新品のアイテムを作るようになりましたが、自分が好きなものを好きなように形に出来ることがとても楽しいんです。その楽しさをお客様に伝えることができるのも最高ですね。

 

Bon Vieuxのオリジナルスクールマフラー

 

ー今後の展望を教えてください。

大島: 正直、独立する時に思い描いていた目標や、やりたい事はほとんど叶えてしまっていて、この”Bon Vieux”もそれなりに運営ができていますし、”Bon Vieux”とは別に”Out of Trad”という自分のブランドも持つことも出来ているので満足感はあるんですが、今やっていることを途切れないように継続していくこと。それができれば自ずと新たな目標ややりたい事が生まれていくかなと思っていますね。

 



 

ーご自身でやりたい事を叶えられている状況はとても素晴らしいことと思います。

大島: “Bon Vieux”はマイペースに楽しみにながら、スタートしたばかりの”Out of Trad”の方をもう少し注力していきたいと思います。“Bon Vieux”は僕が直接お客様とコミュニケーションが取れるので共感を得やすく販売がしやすい環境なんですが、”Out of Trad”の商品は卸なので、まずはバイヤーに買ってもらって、その先のお客様に買ってもらわないといけないので、僕の事を知らない人に販売をしていかないといけないので、その難しさがあるんです。今までやったことのない難しさなので沢山の人に届くようにしたいですし、今は国内流通のみなので海外にも販路を増やし、 多くのファンを獲得していければと思っています。

 

 

バケットハット (Burberry) / ストライプシャツ (Out of Trad) / ベスト (HERMES) / ペインターパンツ (SMITH'S) ¥19,800 / ベルト (Ralph Lauren) / レザーシューズ (Paraboot)

 

 

 

 

大島 拓身 @takumi_oshima
Bon Vieux オーナー / Out of Tradディレクター 京都府出身。1998年にBEAMSに入社。ドレスカジュアル店舗での販売を経てVMDを担当。2018年から副業 でオンラインショップ"Bon Vieux"を立ち上げ。2020年に実店舗を高円寺にオープン。現在はBEAMSから独 立し、"Bon Vieux"と並行して2023AWより自身がディレクターを務める"Out of Trad"を始動。

Bon Vieux インスタグラム @bon_vieux_
Out of Trad インスタグラム @out_of_trad

YouTubeチャンネル Takumi clothing channel