ERな人 VOL.30 mobu / SuperZoo (北角 卓・藤平 昂佑)

 photo, text, edit by NAOKI KUZE

 

1906に創業したアメリカンワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)1970年台に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった現代で 様々な役割を持ち活躍する”ERな人達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。

 

ー今までお二人は”mobu(モブ)”というユニットでファッションをメインに様々な空間演出や什器 製作などを生業とされていますが、この度オープンされた”SuperZoo(スーパーズー)”とはどういったプロジェクトなのでしょうか?その経緯なども教えてください。

北角 卓 (以下 北角): “SuperZoo”とは僕と藤平の2人が手作りしたおもちゃ・家具・雑貨などを販売しているお店です。この”SuperZoo”を始めるきっかけは2つありました。僕たちは”mobu”としての活動が今年で6年目になんですけど、神奈川の座間に作業場を構えているですよ。そうすると都内まで出ないと会う人が年々限定されてきてしまって基本的にはず~っと相方の藤平と2人きりなんですよ()。さらに3年前にコロナが流行しちゃって飲みに行く機会もめっきり減ってしまって。 人との繋がりがどんどんなくなってしまいそうで藤平に「このままやとヤバいな」って話をしてたんですよ()

藤平 昂佑 (以下 藤平): 確かにそんな話してましたね~()

北角: それで初めは都内に友達がフラッと遊びに来れるような作業場を新たに探してたんですよ。 友達が車でも来れるようなガレージ付きでバーベキューとかも出来るような大きい物件を。でもやっぱり家賃が高すぎて、ビジネスで使用する物件が基本的に家賃が高過ぎて僕たちが求めている条件では理想の物件はどうしても見つからなくて。

 

 

 

ー確かに作業場としての機能を持たせた物件は探すのが難しそうですよね。

北角: でも色々と物件を探している中で店舗物件の方が初期費用を抑えて現実的に借りやすそうだ ということに気付いて。それで店舗物件を探す方向にシフトしていったんですよ。そしてもう一つのきっかけの話をすると、誰にも頼まれていないものを作って、それを並べて色々な人に観ても らえるスペースが欲しかったんですよ()

藤平: 僕たち”mobu”はクライアントに依頼をされて空間演出に必要なプロップスや、什器を製作させてもらっていて、オーダーされた内容の中で”mobu”なりに製作物に遊びは効かせてきてはいたんですけどね。

北角: とはいえ全く頼まれてもいないものを作りたい衝動に駆られていたのも事実で()

藤平: 2人で活動して6年目に入って、新たに2人の自己表現の場が欲しかった気持ちがでかいですね。

 

トルティーヤやタコスが出てきそうなレジカウンターも2人が製作した。

 

 

ーこの物件との出会いを教えてください。

北角: 実は隣の”OH! MY BOOKS””SuperZoo”と同時にオープンした僕達の友人でもある福永という女性が店主を務める本屋なんですよ。元々福永が本屋を始めるにあたって少し先に物件を探し始めていて、その物件探しに僕もたまたま立ち会う機会があったりして、”mobu”の方でも物件探しをしていたもののお互い物件探しに難航している時にここの物件がヒットしたんですよね。この物件の間取りが面白くて、正面の入り口は別なんですけど2つの物件が中で繋がっていて「この物件は良いな」ってなった時には僕たちもお店をやりたいモードに入っていたので、最寄り駅が京王線・幡ヶ谷なので仕事帰りにもフラッと来てもらいやすい条件にもハマっているかなとも思えたので一緒にここの物件にしようかということになり決めました。そこからは僕達と福永も共通の友人や知り合いが多いのでどうせやるなら同じオープン日に設定して準備を進めた方が良いよ ねってことで共に追いつけ追い越せで準備進めてオープンをすることが出来ました。

 

お互いの店内から行き来が出来る面白い物件。福永さんが店主を務める”OH! MY BOOKS”では、福永さんが独自にセレクトした国内外の書籍や雑貨、オリジナルグッズが並ぶ。こちらの店内の内装ももちろん”mobu"が手がけた。

 

 

ーいざお店を出そうとなった時に、どのようにお店の名前やコンセプトを決めたんですか?

藤平: 特に明確なコンセプトは設けていなくて、お互いが作りたいモノが違うのでその都度作りたいモノについて話を擦り合わせたりするぐらいですかね。

北角: ベースには2人で各々作りたいものをそれぞれ作っていき、2人で作りたいものは一緒に作っていく感じですね。”SuperZoo”を始めるにあたって洋服も初めて作ることにしたんです よ。”mobu”として綱島にある10匣・Piguさんのお店”Kenzai Depot”の内装も継続的にやらせていただいているんですけど、Piguさんや僕たちの周りの先輩が自分の洋服を作っているのがカッコよくて、僕たちも自身のユニフォームというか、そういった洋服もラインナップに加えたくて今回挑戦してみました。海外のイメージで言うと”Carhartt”とか”Supreme”みたいに洋服とは全く関係ないお札を飛ばすシューターとか、卓球セットとか、ガジェット周りも無駄にたくさん作っているけど違和感なく洋服とも馴染んでいるじゃないですか。僕たちが通ってきたワークやストリートの空気感も表現したくて、お店のラインナップは僕たちのクラフトアイテムがメインです が、そのクラフトアイテムに馴染むようなシャツとTシャツを今回は作っています。Shawn Stussyもまだサーフボードを作っていた時にプロモーション用で作ったTシャツで有名になったように僕たちもそんなふうになりたくて、買い物してくれた人にTシャツを配ったりもしてます()

 

 

 

ーオープンまでの準備はどれくらいかかりましたか?

藤平: 3ヶ月ぐらいですね。

北角: 周りの友達からは「早い!」って言われるんですけど、”mobu”の活動ではもっとタイトなスケジュールで動くことの方が多いので、比較的のんびりと準備することができました。ただオープ ン準備後半は商品の製作で追い込みを掛けないといけなかったので、彫って・縫って・寝ての繰り返しで少しだけ”mobu”の活動をセーブして準備作業をしました。

 

懐かしい漫画やアニメ、ゲームのフィギュアやゲーム機そのものをリメイクした大量のマグネット

 

“SuperZoo”の名前の由来は、バンド”Superorganizm”の自由な音楽感が好きだったことや 大好きな”ドラゴンボール”の超サイヤ人やSFCゲーム・ドラゴンボール超武道伝を幼少期に遊んでいたことから 「Super~」で色々と相性の良い組み合わせの言葉をリストアップし、その中から選ばれた。 “SuperZoo"の裏テーマは「小学生の自分を迎えに行く」ことでもあるそう。

藤平さんの手彫りのお面や”mobu”2人の共通の趣味であるルアーをモチーフにしたオブジェ。 数年前に旅をしたメキシコでの体験も制作に影響しているそう。

 

北角さんが製作したポットに植えられ植物と化した人形。強烈なオーラを放っている。

店内の什器で使用されている資材は”mobu”の活動で余った廃材を100%再利用して出来ている。

 

RRLに置いてそうなイメージで製作したという什器には北角さんが縫い上げたレザーのカードケースやトートバッグが並ぶ。

 

おもちゃ以外にもオリジナルのスツールやチャンピオンのスウェットシャツでコーティングした ハンタートロフィーなども展示販売している。

 

 

ー実際にお店をオープンしてみていかがでしたか?

北角: めちゃくちゃ楽しくてワクワクしますね。あとは褒められるのがめっちゃくちゃ嬉しいです ()

藤平: お客さんが商品を見てテンション上がってくれてるところを目の当たりにすると嬉しくなりますね。

北角: 基本的に手作りの商品しか並んでないんですけど、それを見たお客さんから「アホやな~」 とか「爆発してるな~」とか言われたんですけどそれがめちゃくちゃ嬉しいです()。来てくれた先輩にも「キモいな~」ってリアクションしてくれたのが僕らにとっては褒め言葉というか()。 あとは僕たちが知らないところでSNSを見て遠方から来てくれたお客さんもいたりして、わざわざ足を運んでもらえるっていうところがとてもありがたいですね。

ー逆にオープンして大変だったなってところはありますか?

藤平: 店内の内装や什器の製作より、商品作りの方が大変でした。僕は民族モノが好きっていうところから木彫りのお面やボックスなどを製作しているんですけど、11点地道に彫刻刀で削って いくので1日に1つも作れないんですよ()。なのでYouTubeを観ながら頑張って”mobu”の仕事の合 間にひたすら削る作業をしてましたね。そのおかげで彫刻刀を持つ方の手と指がしっかり太くなりました()

北角: 僕は大変だと思うより、どの作業も本当に2人で自由にすることが出来たので、割とずっと楽しいの方が勝ってますね。

藤平: 普段”mobu”のクライアントワークでは色々な人や企業とお仕事させてもらう楽しさがあるんですけど、製作する時に思う「こうしたいな」」「ああしたいな」がここでは100%具現化できる ので”mobu”とは違う楽しさがありますね。

 

某スケートシューズのボックスを手彫りで表現したボックス。
藤平さんが愛用している彫刻道具。

 

 

ー”mobu”のお二人は前職から数えると10年近く一緒にお仕事をしてこられたようですが、お互いの良さについて教えてください。

藤平: 小っ恥ずかしいんですけど、北角の良さは僕にはない動き出しの速さですかね。何かやりたいことがあって思いついた時に、本当に動き出せる速さを持ってくれているので僕もついて行こうってなるんですよね。

北角: 藤平は本当に手先が器用なので何でも出来るんですよ。その何でも出来る人が僕に優しいってことですかね()。どの現場も2人で施工作業もするのでタイトなスケジュールの現場で気持ち的にも余裕がない時に僕が藤平に対して厳しい口調になってしまう時でも、うまく流してくれるので、僕の方が年上なんですけど藤平の方がお兄ちゃんみたいなイメージで僕は接してます()。そんな感じの2人なんで今まで無事活動できてるんだと思います()

 




ー今後の展望を聞かせてください。

北角: “mobu”としては、現状ファッション界隈で活躍されている方々にお世話になることが多くて、 そんな活躍されている方々にいつまでも頼りにされる立ち位置にしっかりと居続けることを目標にしています。そして”SuperZoo”としての活動は、ファッションとかアートで活躍されているクリエーターや先輩みたいに僕たちはなれないけど、この”SuperZoo"という場所を通して僕らなりのコミュニティを確立して、先程話したShawn Stussyみたいに新しいカルチャーをマイペースに作っていけたらなと思っています。

 

チェックボタンダウンシャツ (SuperZoo) / ペインターパンツ (スミス) ¥29,700

 

 

 

 

mobu / Super Zoo (北角 卓・藤平 昂佑)

@mobu_superzoo_ktkd

@mobu_superzoo_fuuuzy_

プロップ製作・プロップスタイリスト 大手セレクトショップにてVMDとして活躍。2018年に独立し”mobu”を立ち上げる。ファッション ブランド、百貨店、店舗など様々な空間に合わせた”mobu”ならではの独創性の高いプロップ製作、 空間演出を行っている。20239月に”mobu”によるクラフトアイテムを中心としたおもちゃ、雑 貨、什器などを展示販売する”SuperZoo”を幡ヶ谷にオープン。