ERな人 VOL.28 山口 結 (SANDWICH CLUB店主)

 photo, text, edit by NAOKI KUZE

 

1906に創業したアメリカンワークワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台 に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛さ れ続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった 現代で様々な役割を持ち活躍する”ERな人”達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。

 

ー”サンドイッチクラブ”を開く以前から料理人として活動されていたんですか?

山口 結 (以下山口): ちゃんとした料理人時代っていうのが実はないんです。20歳の時にクラブのバーでお酒を作っていたのが飲食業のルーツで、その後系列のダイニングバーでも並行して働くようになり、そこではキッチンに入ることはあったんですけどサンドイッチのお店で働いたり作ったりしていませんでした。

ーではなぜサンドイッチを作り始められたのでしょうか?

山口: クラブのイベントのフードで、私ならではの特別なフードを提供できたらなと思い色々とメニューを考えていました。バー担当だったこともあり普段夜に飲みに行くことの無い生活だったので、出勤前にコーヒー屋さんに通っていたこともあり、サンドイッチだったら私の好きなコーヒーにもお酒にも合うし、立ったまま食べることが出来るし、おつまみっぽい味のモノも作れるし、雰囲気も良いし、「サンドイッチ良いかも!」って閃いたんです。そして独学でサンドイッチを作り始めたら「サンドイッチ作るの楽しいな」と思うようになり、その魅力にどんどんハマっていったという感じですね。その後、今は無くなってしまったんですけど下北沢のシェアオフィスに併設されていたコーヒースタンドの方から、「うちはフードメニューが無いから日曜日ぐらいフードとか出したいんだよね~。結ちゃんやってみない?」と相談いただいた事がきっかけになり、 週に1度のペースで間借りで私のサンドイッチを2年ほど販売させて頂いてました。

山口さんがいつも仕入れをしている下北沢の肉屋”ミヤタYA"さん 上質で様々な種類のお肉をまとめて仕入れることが出来る。

Tシャツ (ユエン) / ヒッコリーペインターパンツ (スミス) ¥22,000 / サイドゴアブーツ (ブランドストーン) / トートバッグ (ウェッドストア)

ー間借りでの営業から、どのように現在の”サンドイッチクラブ”へ繋がっていったんですか?

山口: 当時は独立なんて出来るわけないと思っていたので、物件を探したりもしていないし、貯蓄もなかったので、今みたいにお店を持つなんて夢のようなことでした。ところが2017年のある日、仲の良い高校の同級生から連絡があり、「下北の路地の中の気になってたお店が閉店してた よ」って教えてくれて。「そんな路地にお店なんてあったっけ?」と思い見に来たら、全部荷物や内装もそのままの状態で「閉店します」の貼り紙を貼った状態にされていました。その時の私は何故かその物件に興味を持ち「こんな奥まった小さくて古い物件っていくらぐらいなんだろ う?」って思ったんですよね。それまで物件なんて調べたこともなかった私は、下北沢の物件の家賃相場も全く見当も付かなかったけれど、居抜きでそのまま物件を引き継げたらひょっとしたらラッキーなことになるんじゃないかと思いお店の方に連絡をしてみました。するとお店のオー ナーの方がとても親切な方で家賃なども教えてくれて、大家さんも紹介してくださったんですよ。 結果居抜きでの引き継ぎの条件も提示してくださって、「下北沢でお店を開くのにこれぐらいの資金が必要なんだな」ってそこで初めて知ることが出来たんです。その時の私は資金が無かったんですけど、この物件を逃したら絶対に後で後悔することも目に見えていたので資金調達してみようと動いたんです。個人の人は地元の銀行に行く方が良いみたいなことを耳にしたことがあったの で、地元の銀行に行ってみようと。当時髪の毛はピンク色・半袖・短パン・ビーサンみたいな格好で下北沢の近くの銀行に「お金って借りれるんですかね?」って相談に行ったら、流石は下北沢の銀行で、そんなカジュアルな身なりの人には慣れているみたいで親切に話を聞いてくださって、 世田谷区の創業支援の制度を紹介してくれて、資金調達まで漕ぎ着ける事が出来たんです()。そこから半年ほどバー勤務を続けながら、出勤前に内装などをDIYしたりちょっとずつ準備を進めていき、晴れて20181月にサンドイッチクラブをオープンすることが出来ました。

先程仕入れたお肉を調理していく。

 

定番人気メニューの”豚ねぎチーズ”や”とりそぼろチーズ”の仕込みを行っている。

ー実際に”サンドイッチクラブ”としてお店を持って活動をされてみて、いかがでしたか?

山口: 1人で切り盛りしているので毎日てんやわんやですね。アレやんなきゃコレやんなきゃ、アレが出来てないコレが出来てないみたいな感じで、いつか落ち着くであろうと思ったまま現在に至ってます()2023年現在もなんかずっと考え続けないといけないしやらなければいけないことだらけで「お店を経営するってこんなにずっとドタバタしないといけないんだぁ」って思ってます ()

サンドイッチクラブにはお土産としても人気の店頭で使用可能な決済機能の付いたキーホルダーやトートバッグなどのオリジナルのグッズをはじめ、コラボレーションしているハーブティーやセレクトしている鶏革命団のカレーやスープも店頭に並ぶ。

 

ー下北沢は夜の飲食店は多いイメージですが、朝7時から営業されているスタイルは下北沢だと異色ですよね。

山口: ずっと昼夜逆転のバー勤務だったんですが、私の体力的に長くは続けられないなぁとも思っていたので、朝の時間に営業出来るお店にしたかったのと、イメージですが海外のお店みたいに 朝に特化したお店にしたいなぁっていう思いもあって思い切って7時~15時の営業スタイルにしました。下北沢で朝7時から営業しているっていうインパクトが強いのか、朝早い時間帯からお客さんに沢山お越しいただけていてありがたいです。

ーお店を持ってみて一番楽しいことはなんですか?

山口: 不思議なことに、楽しいこともずっとドタバタしていることかもしれないですね()。ずっとドタバタしているけど全部自分でやることが出来るし、お客さんに会えるのも楽しいですね。お店をやってると普通は私がお客さんの話を聞いてあげる立場になるのですが、お店がドタバタしすぎてしまって自分の手が回らず上手く接客が出来なくて落ち込んだ時なんかは、常連のお客さんに「ちょっと聞いてくださいよ~」なんて慰めてもらうことあったりして、私が1人で切り盛りしているから許される面白い関係性をお客さんと持つこともできます。プライベートで嫌な事があったりして落ち込んでいても、朝お店を開けばお客さんが会いに来てくれるので、人と話したりすると元気が自然と出るので、楽しくやらせていただいて本当にありがたいことですね。


“オムレツとハム” 半熟のオムレツとハムとバターの優しい塩味が見事にマッチした一品。

 

ー最後に今後やりたいことを教えてください。

山口: どんどんプライベートと仕事の隙間を埋めて馴染ませていきたくて、東京の下北沢でお店をやることも本当に楽しいけれど、今後10年後とか先を見ると、もう少し自然のあるところで民宿とか宿泊施設みたいなモノを経営しながら、朝ごはんにサンドイッチが出てくるような場所を作りたいなとうっすら考えています。サンドイッチクラブの地続きで、色々な人が遊びに来たり、 過ごす事ができる場所を提供できたらなと。とか言いながらずっと下北沢にいるかもしれないですけどね()

 

 

 

 

 

 

 

山口 結 @sandwichclub_


SANDWICH CLUB店主
2018年より下北沢駅からすぐの路地奥に”SANDWICH CLUB”をオープン。注文を受けてから作る温かいサンドイッチは下北沢の人々だけにとどまらず、全国にも数多くのファンを獲得している。 様々なマーケットイベントなどの出店にも積極的に参加し、イベント出店ではその土地の食材を用 いたサンドイッチを作るこだわりも魅力のひとつ。


SANDWICH CLUB スーベニアショップ https://sandwichclub.base.shop