ERな人 VOL.26 中山 良子 (バイヤー / ファッションディレクター/ PR)

 photo, text, edit by NAOKI KUZE

 

1906に創業したアメリカンワークワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台 に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛さ れ続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった 現代で様々な役割を持ち活躍する”ERな人”達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。


 

ーフリーランスになられてもうすぐ1年が経つとのことですが、バイヤー・ファッションディレクター・PRとマルチな肩書きをお持ちですね。それぞれで動きが異なると思うのですが普段はどのように活動されていらっしゃいますか?

中山 良子 (以下中山): もともとシップスでバイヤーを5年ほど任されていたこともあり、バイヤー としての動きは、クライアントに合わせた計画を立て、その計画に則って目当てのブランドの展示会に出向きバイイングをしていくのでフリーになってもバイヤーに関しての動きは意外とそんなに変わらないんですよね。変わった部分だと、ディレクションやPRの仕事はバイヤーの仕事と違って自分の内面をアウトプットしていかないといけない部分が多いので、家に籠ってアイデアを考え巡らせる時間もありますし、リサーチがてら写真展に行ったりしてディレクションするブラ ンドのアイデアを見つけに行ったりする機会が増えましたね。フリーになって自分のペースで活動ができるようになったおかげでインプットの時間を大切にするようになりました。今はまだまだ 経験値を増やしていかなければとも思っているので。

 

取材で伺った千駄木の”FUNagain”は中山さんの旦那様が経営するリユースショップ。 国内外から仕入れたインテリア・雑貨・アートなど幅広いアイテムが比較的リーズナブルにラインナップされている。

 

ー前職はバイヤーをされていたとのことですが、ファッション業界だとバイヤーは人気も高く言うなれば”花形”ポジションですよね。なぜ独立しようと思われたんですか?

中山: 学生アルバイトの頃から遡ると15年ほど会社に所属していたんですけど、セレクトショップに憧れてファッションが好きになった世代なので、セレクトショップのバイヤーとして活動も出来てありがたかったですし、本当に様々な経験をさせてもらって幸せだったのですが、バイヤーの特性上どうしても出来上がった物をバイイングすることがほとんどですし、別注商材をブランドさんに協力して頂いて開発することもあったのですが、ブランドさんが持っている”1”有る モノから”10”とか”100”にしていくことが多く、それはそれで本当に素晴らしい経験だったのです が、私の中ではそのもう一歩前の段階の”0”からの物作りをしたり、そういったプロセスや生み出したモノを私なりの方法で発信したいと思うようになっていき、思い切って新しい道にチャレンジすることを選んだんです。

 

中山さんが仕事で愛用しているMacBookとノート。 ノートには仕事をする上でのアイデアや自身を鼓舞する為の言葉が綴られているらしい。

 

ー新しい活動の中で楽しいと感じる瞬間はどのようなタイミングでしょうか?

中山: 自分が携わるプロジェクトで、例えばLOOK撮影だったり、プロダクトのコンテンツを制作をしなければいけない時に、信頼を置ける仲間や素敵なクリエイターの方々に仕事を依頼し、関係が繋がっていく中でコンテンツとして形が出来上がっていく時は喜びもひとしおですね。その反面大変だなと感じることもあります。会社にいた時はバイヤーだったので外部の方とのやりとりが多いものの、ベースは社内の同僚とプロジェクトを進行することが多かったですし、長年一 緒に働いているメンバーと行動を共にするので意思疎通も容易でしたが、フリーになってみて初めましてで物作りをスタートしないといけない場面も多く、イメージの共有が出来ていないと上手く進行できないことも有るので、最近はプロジェクトを始めるための最初のイメージ共有な ど、コミュニケーションにまつわる部分がとても大事だなと思ってお仕事に取り組むよう気をつけています。

 

ーSNSなどを拝見していると、中山さんはとてもファッションが好きなんだろうな感じるのです が、ファッションで参考にしている人などいらっしゃいますか?

中山: 「この人!」っていう特定のミューズに当たるような人は実はいないんですけど、私は身長がそんなに高くなかったり、手足も決して長くないこともあってどのように洋服を選んで着れば体型をカバーし、素敵に見えるかっていうことを小学生の頃からずっと意識していて、大人になった今もそれをずっと追求し続けているんです。なので昔から色々な洋服を着ますね。その中でも好きなのが今日も着用しているような非日常な民族モノだったり、いわゆるクラフト系の洋服は大好きですね。ただ全て民族モノやクラフト系の洋服でコーディネートを組んでしまうとただの異国の 人になってしまうので()、スタイリングの好みとしてはクラフト系のアイテムにベーシックなデ ニムを合わせるような非日常日常の掛け合わせのようなコーディネートはバランスが良くて好みなんですよね。

 

 トップス (ユーズド) / チューブトップ (ナイスナイス モーメント) / デニムペインターパンツ (スミス) ¥17,600 / サンダル (エルメス)

 

 

ー日々のコーディネートで参考にされているモノはありますか?

中山: 雑誌も読むし、映画も好きで良く観ます。コーディネート自体を真似するわけではないのですが、特にファッション目線で好きな映画はウディ・アレンのアニー・ホールですね。とにかくダイアン・キートンの着こなしがめちゃくちゃ素敵なんですよ。ラルフローレンのメンズの大きなタイをしてバギーパンツを穿いている緻密なバランスのコーディネートは本当にカッコ良いなと 思っていて、実際に私がコーディネートで取り入れるならもう少しレディースライクなアイテムを足しちゃいますが、カッコ良くてつい何度も観てしまいますね。あとは90年代のハイブランドの コレクションのルックは良くチェックしていますね。

ー休みの日はどのように過ごされていますか?

中山: 昔からずっと同じルーティンでは有るんですけどランニングと骨董市やリサイクルショップ 巡りですね。ランニングはフリーになって隙間の時間に走りやすくなったので月に100kmぐらいの距離を目標に走っています。ランニング中は考え事も出来るので、仕事のアイデアを練りながらなんてことも多いです。骨董市やリサイクルショップ巡りは近場もよく行きますし、旅行とか遠出した時なんかも事前に調べてバイイングがてら必ず行くようにしています。地方だと東京と比べるとありえないぐらいお得な金額でお宝に出会えることも多いんです。

“FUNagain”で取り扱う雑貨の一部は中山さんがバイイングしたものも並んでいる。

 

中山さんオススメのポップなカラーリングが目を引くスライサーセット。

 

ー今後、挑戦したいことを教えてください。

中山: 40歳になるまでに私がディレクションするお店を出したいんです。なのでその手前の目標としては、そのお店の軸となる私がディレクションするブランドをしっかりと展開出来るように、 今頂いているディレクターとしての仕事をもっと頑張りたいですね。お店やブランドをやる上で発信力などトータルで色々と表現が出来なければいけないと思っているので、バイイング・ディレク ション・PRと今携わっているお仕事の精度をさらに高めていきたいです。特にディレクションに 関するお取り組みはどんどんやっていけたらと思っています。

 

 

中山 良子 @nakatiin

バイヤー・ファッションディレクター・PR

大手セレクトショップで販売職、VMDを経験した後、レディース部門のバイヤーとなる。他社と 差別化できるものをテーマに別注を手がけたり買い付けを行う。現在はフリーで活動中。