ERな人 VOL.25 金丸 りりあん (one nova CEO / ブランドディレクター)

 photo, text, edit by NAOKI KUZE

 

 

1906に創業したアメリカンワークワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台 に日本で流通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛さ れ続けてきたブランドです。このウェブマガジン「ERな人」では、そんなスミスを身にまとった 現代で様々な役割を持ち活躍する”ERな人”達の仕事やライフスタイルをご紹介していきます。

 

ーりりあんさんは大学生の時に起業されたんですよね?そのきっかけを教えてください。

金丸 りりあん (以下りりあん): 運営しているワンノバというアンダーウェアブランドは私と別に、もう1人共同代表を務める高山という相方がいるんですけど、その高山は高校からの友人で、その彼から「ラーメン奢るから一緒に起業しない?」って声を掛けてくれて。私も当時何か新しいことに挑戦をしたいと思って模索していた時だったのと、高山と起業することが面白そうだったので私も軽い感じで「いいよ」ってふたつ返事で一緒に起業することになったんです。ちなみに奢ってくれたラーメンはチェーン店じゃないちょっと良いラーメン屋さんでした()

ー”ワンノバ”の始まりはメンズのアンダーウェアとしてのブランドだったようですが、なぜメンズ のアンダーウェアだったんですか?


りりあん: 起業するにあたってどんなモノを取り扱うのか相方と話し合った時に、衣・食・住の 中でに関することは当時の私たちには難しそうだなと感じたのですが、であれば何かできそうだねと話している中で、相方が「パンツは?」と提案してくれて。確かにパンツは誰もが毎日穿くものだし、洋服じゃなくてアンダーウェアのパンツならアパレル経験のない私たちでもなんとなく作れそうだしなんだか面白そう!っと思ったノリでメンズのボクサーパンツを作ることになったんですよね。その後メンズのボクサーパンツを作ることがとても大変なことだと気付かされるのがもう少し先なんですが。

ーメンズアンダーウェアブランドとして始動していくにあたってまずはどのような動き方をされたんですか?

りりあん: まずは色々なブランドのパンツを集めてディテールを調べたり、実際に穿いてみたりしてリサーチを行いました。あとは当時エシカルファッションが注目されていたこともあり、私たちが作るパンツにもオーガニックコットンを使いたいと思っていたので、実際にインドまで行って コットンが摘まれていくところを見に行ったり、日本の工場さんを調べて見学させてもらったり と初めの1年は多くの情報をインプットしていきました。

 

ー当時18歳とは思えない精力的な動きで本当に驚かされます。

りりあん: 大学生だったのでとにかく時間だけはあったので勉強しながら「どんなパンツを作ろう?」って常に考えて過ごしていました()。起業するために動き出してちょうど1年経った頃に、相方が受講していた授業で大学OBの投資家の方がゲストにいらしていて「この中で1組だけ 出資してあげるからビジネスプランをメールしてね」って黒板に書いてあって実際に送ってみたんですよ。「下着を作ってネットで売ります。」って伝えたら「若いし面白いね。」って言ってくださって本当に出資してくださることになったんです。私たちは物作りのノウハウがなかったので、 物作りをするときにミニマムがあるとかそういったことさえ知らなかったんですけど、先程お話ししていた工場さんを回った中で物作りに必要な基本的な知識を丁寧に教えてくださった工場さんがいて「まずは資金面がクリア出来たらまた連絡してきてね」と言ってもらえていたので、「資 金が集まりました!」って遂に連絡することができ、念願の私たちの最初のプロダクトを作ることが出来ることになったんです。それが2019年なんですがたくさんのお客様に購入していただき 本当にありがたかったです。その後は私にとっては東京の父だと思っているのですが、池尻にオールユアーズさんってブランドがあったんですけど、そちらで修行させていただきながら、店 頭にワンノバも置いてくださっていて3年ほどそちらで働きながら直にお客様にワンノバのパンツを販売させてもらっていました。

 

 りりあんさんが学生の頃勤めていた池尻の旧”オールユアーズ”前にて

 

ー”ワンノバ"がスタートした時は大学生がエシカルな下着のブランドを立ち上げたということでか なり話題になったようですね。

りりあん: そうですね。エシカルなプロダクトを生産することで透明性の高いブランド背景を掲げて透明なパンツっていうキャッチコピーもかなりメディアに刺さっていたことと、大学生が社会的に意義のある活動をしたというところもフォーカスされて、ウケがとても良かったので所謂バズったみたいな感じになりましたね。なのでブランドとしては本当にとても良いスタートが切れてとてもありがたかった反面、透明なパンツってワードの力が強すぎて、ブランドを表す言葉に なりすぎてしまって私たちが作るパンツが本当にその言葉に相応しい良い物なのか不安になってしまって限界を感じてしまったんですよね。それで本当はワンノバでどんなことがやりたかった のかな?とか色々と考えるようになってしまって、2019年末ぐらいに生産も一度ストップして、 その時はブランドに携わるメンバーも増えていたのですがみんな辞めてもらって、ちょうど大学の就活に入り始めるタイミングでもあったので、相方とも就職をするかブランドを存続させるかを話し合ったりしていました。

りりあんさんは学生の頃からフリーランスのモデルとしても活動している。

 

ーあくまで”ワンノバ”のお二人は当時大学生なので、将来の選択肢も無限にある中で難しい選択を強いられたんですね。

りりあん: ブランドを休止しているその間も、パンツの素材開発は続けていたので色々なブランドのパンツを買ってリサーチしていた時に、ウールモダールを使われているパンツは日本には少ないなと気付いたんですよね。常により良い商品にするために、生産するたびに細かなアップデートを 繰り返していたのですがこのウールモダールを使えば私たちが本当に納得できるパンツが作れるかもって改めて思えたんですよね。ですが、その理想とも言えるオリジナルのウールモダールの生地を作ってパンツを生産するにはブランドに残っている資金を全て使わないといけなかったんですけど、最後の賭けだと思って「えい!」って思い切って使うことにしました()。本当に最後の賭けでしたし、普通に売ってもダメだと思ったので海外のキックスターターというクラウドファンディングのプラットフォームで一度展開することにしたんですけど、とても好評だったんです。新開発のパンツが受け入れてもらえるなら「ブランドを続けられる!」と思えて、改たな生産背景も探すことができて現在の納得できるワンノバのクオリティーに押し上げることができたんです。 私の場合はコロナ禍であってもリモート授業が増えたことで、ワンノバのために時間を使うことが出来たのも大きかったです。

 

 

ーリモート授業を受けていた他の学生はりりあんさんが裏でこんなに大変な思いをして動いていたと思わないでしょうね。

りりあん: 本当にたくさん悩みましたが、相方の高山とはブランドで悩みが生じていてもめちゃくちゃ仲が良かったので一緒に乗り切ることができました。彼は経営面で頑張ってくれていて、私は ブランディング面を任せてくれているのですが、ブランドで色々と決定を下さないといけない場面で彼はいつも私の意見を尊重してくれていたので本当にありがたいです。

 

 

ーメンズアンダーウェアブランドとしてスタートした”ワンノバ”ですが、2022年からはユニセックスアイテムとレディースアイテムも展開開始されていますね。このブランドリニューアルのきっかけはなんだったんですか?

りりあん: ギフトとして購入してくださったお客さまから「喜んでくれたので私も穿きたいです」 とご連絡いただくことがあったり、トランスジェンダーのお客さまから「同じデザインで体に合う ボクサーパンツが欲しい」とご意見をただくこともあって。下着ってアイテムの特性上「性」との関連が高いのですが、女性下着だとレースや花柄などのフェミニンな感じかスポー ティーな感じかの二極化していて。ワンノバの持つヘルシーな色使いや中性的な雰囲気を好んでくださる方が多かったんです。お客さまが増える中で「デザインがこのままで、自分の体に合うパンツが欲しい」と言ってもらう機会が増えていたので、私としても新たなフェーズに挑戦したいと思ったの で、アイテムやサイズの選択肢を増やすことにしました。創業してからメンズアイテムだけを作り続けていたので、受け入れてもらえるか不安に感じていたのですが、販売してみると「待っていました」と言ってくれる方が沢山いてこの上なく嬉しかったです。お客さんの男女比も今は5:5くらいになりました。あとアクティビティをされる方にもウールモダールの生地は防臭 性や調温調湿機能に長けているのでそういった方々にも愛用していただけて嬉しいですね。


[nova wool® melty plus] Flat Boxer Brief (UNISEX)

 

[nova wool® melty plus] 3D Wireless Bra (FEMALE) / [nova wool® melty plus] Full Cover Bikini (FEMALE)

 

アンダーウェアには珍しいロットナンバーもパッケージに刻印されている。

 

ー今後挑戦したいことはありますか?

りりあん: この5年ぐらい私の中心にはワンノバがあったんですけど、まだ何になるかはわからないのですが学びたい欲がとてもあるので、新たに外に出て勉強をしたいと思っています。そこで得た学びをまた違った形で発展させられることが出来たら良いなと思っています。私の周りには起業していたり、クリエイターとして活動している友人がとても多く休みの日はそんな友人達に会う機会が多いのですが、その友人達と新たな活動をする兆しが実はあるので、その活動を開始するためにも勉強を頑張っておきたいなと。そんなクリエイターとして活動している友人達に最近 はワンノバを通して改めて仕事を依頼できることが嬉しくて、そんな機会をもっと増やしていきたいです。素敵な活動をしている友人がとても多いのでそんな友人達を応援をしたいんです。ワンノバはアンダーウェアなので、色んな輝いている素敵な人たちと関われる可能性があると思っているので、アンダーウェアはコンテンツが非常に少ないと感じるので様々な活動で輝いている人たちのハブになって届けられような構造を作りたいです。

池尻で活動していた時からの行きつけの”Good People & Good Coffee”で談笑するりりあんさん

 

PANTS : スミス (CHARIE PANTS THE ORIGINAL / VINTAGE WASH *coming soon

 

 

 

撮影協力: @goodpeople_goodcoffee

 

金丸 りりあん @lilian_kanemaru @onenova_jp
one nova CEO / ブランドディレクター
1999年生まれ。在学中にアンダーウェアブランドone novaを設立。自然由来素材の高機能アン ダーウェアを展開し、Forbes 30 under 30 Asia に選出。「一生で一番着る服」である下着から、 曇りのない気持ち良さを創造するために、ブランドの運営を手掛けている。

one nova オフィシャルサイト https://onenova.jp/