ERな人 VOL.13 / 山口 徹 (コーヒー焙煎士 / ウェルダー)

 

ERな人 VOL.13 山口 徹 (コーヒー焙煎士 / ウェルダー)

photo, text, edit by NAOKI KUZE

 

 

1906に創業したアメリカンワークワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台に日本で流 通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランド です。そんなスミスを現代で活躍する”ERな人”に仕事やライフスタイルを通して着こなしてもらい、スミスの 魅力を語っていただきます。

 

 

 ー自然豊かな葉山町の山間のログハウスでコーヒー焙煎士・ウェルダーとして活動をされていらっ しゃいますが、本当にいわゆる男の夢が詰まったワークスペースと居住空間が融合したカッコい いお家ですね。この地での活動のきっかけは何だったんですか?

山口 徹(以下 山口): もともと生まれも育ちも横浜で、ずっと会社員をしていたんですけど、葉山に たまたま友人が多かったのも理由の一つで。あと一番の決め手だったのは、僕は愛車がジープなん ですけど、横須賀にジープのお店があってよく通っていて、その社長さんが葉山に住まわれていて 「こんなに葉山によく来るなら引っ越して来いよ」と言われた時のノリで6年前に本当に引っ越し てきました()。同じ神奈川県ですが海も山も本当に綺麗なので葉山に来て正解でした。

ーそこからどのようにして今の活動に繋がっていったんですか?

山口: 僕は実はコーヒーの味が苦手で、その代わりお茶が結構好きでよく飲んでたんですよ。でも ログハウスに住み始めたらお茶じゃなくてコーヒーのほうがサマになるよなぁとふと思ってコー ヒーを飲み始めたんですけど、その飲んだコーヒーがすこぶる不味かったんです。そしてその時に 感じたのが「世界中でコーヒーはあんなに広まっているけど、なんでみんなこんなにコーヒーとい う苦くて不味い飲み物を飲んでるんだろう?」と。そこから一気に探究心をくすぐられてしまい コーヒーの世界にのめり込みました。そして自分なりに美味しいと感じるコーヒーを自ら焙煎 し、ついには販売にまで至っていくという流れですね。

ー続いてウェルダーという肩書きにも触れていきたいのですが、こちらはどういった流れで?

山口: コーヒーの味自体はいまだに少し苦手な部分も正直あるんですけど()、コーヒーの佇まい とか、焙煎したコーヒー豆の色なんかがとても魅力的で。焙煎士になってコーヒーを販売するよ うになってSNSなどで投稿するためにコーヒーを淹れる映像を自ら撮影し編集するようになるん ですが、その際にコーヒーを淹れるためのギアに対して「もっとこういうコーヒーのギアがあった ら良いのにな。」と思うようになってきてしまって。インダストリアルなテイストが個人的にも 好みだったので、そうしたコーヒーのギアが世にあまり出回っていなかったこともあり自分で溶 接して作り始めたのがウェルダーとしてのきっかけです。

ーコーヒーのギアをウェルダーとしてハンドクラフトしているということがとても稀有なケースですね。

山口: キャンプギア系のガレージブランドはコロナ禍の流行もありとても増えた印象ですが、コー ヒーのギアでそういうガレージブランドみたいなのが本当に少なくてニッチではあるんですけど、自分みたいなコーヒーギアのブランドが世に一つぐらいあっても良いかなと思って活動しています。

 

コーヒーの生豆をロースターに流し込む。

 

自宅のエントランスにあたるウッドデッキにてドラム缶をアレンジして自作した作業台にて焙煎や溶接の作業を行っている。

数分するとロースターから香ばしい香りとともに大量の水蒸気が舞い上がる。山口さんが愛用するロースターは本来新 しい豆を焙煎する前段階で、少量の豆で焙煎サンプルを作るのに用いられるサンプルロースターと言われる小型のロー スターで全て作業を行っている。山口さん曰く大量生産はできないがその分クオリティをコントロールしやすく、一粒 一粒気持ちを込めて焙煎できるからとのこと。

途中何度か豆の焙煎具合を確認する。少し爆ぜ始めた豆。

 

15分ほどすると、豆の状態を確認し中深煎りの状態になったのでザルに豆を上げていく。

 

 

 

山口さんの手によって焙煎されたコーヒー豆が美しく輝いている。

 

 

“ハヤマログキャビンコーヒー”のドリップバッグとコーヒーキャニスター。豆の焙煎だけでなくパッケージのデザイン、パッケージング に至るまで全ての工程を山口さんが手作業で行っている。

 

続いて溶接作業も披露してくれた。

 

山口さんの手によって繋ぎ合わされた金属パーツ。

 

オーダーが入ってから全て手作業で生産される”ハヤマログキャビン”のコーヒーギア。 インダストリアルな力強さと美しさが共存している。

 

ー本日はスミスの”4ポケットカバーオール”と”R-ワークパンツ”をセットアップで着用していただ き作業をしていただきましたがいかがでしたか?

山口: 周りの洋服好きの友達から今回の企画に出させてもらう話をしたらすごいじゃん!って褒 めてもらいました()。実際僕自身は初めて着用させてもらったんですけど非常に使い勝手が良

かったです。圧倒的にライトな質感のナイロン素材だったのでカバーオール特有の硬さもないです し、作業中に暑くなっても腕を捲ったり出来るし。今日も作業中も全然蒸れないなかったです。 僕が住むこの葉山の山間は一日の中で昼は暖かくても朝晩は冷えることも多いのでこういった軽 い羽織りものは作業じゃなくても重宝しますね。仕事柄服が汚れることも多いので、洗ってすぐ に乾きそうな素材っていうのもポイントが高いです。パンツもゆったりしたシルエットとイージー 仕様だったのでとても楽でした。

 

スミスらしいオーセンティックな雰囲気でありながら美しいステッチワークが光る。マットな光沢と独特なシワ感も魅力的。

 

ー最後に今後の活動について教えてください。

山口: 今はありがたいことに日本だけでなく海外からのオーダーも多くて、個人的には海外に販路 を広げていきたいなと思っています。というのも、僕はドリップコーヒーのスタイルが好きなんで すけど、どうやらドリップとかサイフォンっていうスタイルは今や日本が主流でやっている文化ら しくて。

ー確かに海外でコーヒーを頼むとエスプレッソマシーンを使ったスタイルが多い気がします。

山口: もちろん海外から入ってきたコーヒーの淹れ方のはずなんですけど、僕たちが海外の文化だ と思ってやっているドリップでの淹れ方を、海外の人が逆に面白いって興味を持ってくれてSNSを 中心にDMが来ることが本当に多くて。自分が好きで始めた活動が知らず知らずのうちに日本文化 の発信に繋がっているとしたら面白くて。カッコよく言うと日本文化の発信にもなれば良いなと 思っています。

 

 

 

山口 徹 @toru_ga_toru @hayama_logcabin_coffee コーヒー焙煎士 / ウェルダー

葉山の山間のログハウスで”Hayama Log Cabin Coffee”を運営。全てハンドクラフトにこだわり オーダーが入ってから焙煎するコーヒーとコーヒーギアは日本だけでなく海外のコーヒーフリーク にも愛されている。
Hayama Log Cabin Coffee https://logcabin.shopselect.net