ERな人 VOL.12 / 田口"Jackie"岳佳 (STUDIO JCPオーナー)
ERな人 VOL.12 田口 “Jackie” 岳佳 (STUDIO JCPオーナー)
photo, text, edit by NAOKI KUZE
1906に創業したアメリカンワークワークブランド”SMITH’S AMERICAN”(以下スミス)。1970年台に日本で流 通するとリアルワーカーからアメカジフリークまで、ジャンルレスに様々な人々に愛され続けてきたブランド です。そんなスミスを現代で活躍する”ERな人”に仕事やライフスタイルを通して着こなしてもらい、スミスの 魅力を語っていただきます。
―昨年末に、居住を構える葉山に”STUDIO JCP”という縫製工場を設立されたとのことですが、その経緯を教えてください。
田口 “Jackie” 岳佳(以下ジャッキー): 15年ほど前にも一度、出身地の岡山で縫製工場を立ち上げたことがあるんですが、10年ほど前に私が東京に上京するタイミングでその工場はもともと出資してくれた会社にそのまま譲渡したんです。それからはブランドに所属したり、フリーランスでデザイナーをしたり、撮影のお手伝いをしたり、誤解を恐れずに言うと”東京っぽい仕事”を何でも色々とやっていたわけなんですが、ふと「これ、私じゃなくても良いよね?」って思うことが増えてきてしまって。私はせっかくミシンも踏めるし、デザインやパターンも引いたりもできるんです。それに生地についての知識もあり、生産の進行管理もできるのでちょっとずつ東京での活動と並行しつつ、縫製をメインとしたハンドメイドの仕事の割合を増やしていきました。
ー原点回帰していったんですね。
ジャッキー: はい。インディペンデントなブランドを中心にMIYAGI HIDETAKA、10匣など様々なブランドの縫製を中心に生産に携わっていて、その頃は藤沢に住んでいて、自宅に作業場スペースを設けたことで、小ロットかつ短納期で作業をこなすことで、高いクオリティを保ちながら普通の工場ではありえないスピード感で生産することを実現できました。
ー普通の工場だと生産に3ヶ月とかでも早い方ですよね?
ジャッキー: そうですね。内容とか数量によりますが私の場合だと1ヶ月前後で仕上げていて、2年ほど前にもう少し大きい家でより作業のしやすい環境と、のどかな生活を求めて葉山に移住したんですが、そのスピード感に特化して活動をしていたら軌道に乗りすぎてしまって私1人ではいよいよ追いつかなくなってしまって。本当にスケジュールが厳しい時は近所の同世代の知り合いに手伝いに来てもらったりしていたんですけど、やがてスタッフとして雇うことになり1人増え~2人増え~としていると自宅の規模じゃ収まらなくなってしまって(笑)。そんなこんなで葉山の家の近くにこの”STUDIO JCP”を設立することになったんです。
ー嬉しい悲鳴がきっかけで”STUDIO JCP”の設立に繋がるんですね。スタッフの方というのはもともと縫製などの経験のある人がたまたま近所に住まわれていたんですか?
ジャッキー: いま働いてくれているフタッフは縫製の経験がないゼロからのスタートで手伝ってもらっていて、その時から1年ぐらい経過しているんですが、まだまだ私が教えることも多いし、クオリティを保つために私が不在になる時は”STUDIO JCP”はお休みすることにしているんですけど、技術職で想いがあれば本当に成長が早くて、みんな今では” STUDIO JCP”になくてはならない存在に成長してくれているんです。自分で何かを作り上げることに喜びを感じてもらえることも嬉しいですね。
ーとても良いコミュニティが形成されているんですね。”STUDIO JCP”の働く上で大切にされていることなどありますか?
ジャッキー: 葉山の土地柄なんですけど、基本的にみんな家庭を持っている人が多いので、働く上で仕事は大事なんだけど家庭・家族を一番に考えて行動してもらうようにしています。なのでどんなことがあっても自由出勤のスタイルですね。例えば、朝に「子どもが熱が出て休みます」って連絡があったとすると”STUDIO JCP”的には全然OKという感じで。家庭環境をとにかく1番に大事にしてもらえるように心がけて実践していますね。
―安心して働ける素晴らしいスタイルですね。
ジャッキー: ただ私が休みの日はスタッフが働きたくても必然的に休みになっちゃいますけどね(笑)
プロムナードコート(スミス) ¥22,000 / シャツ(マリオンヴィンテージ) / ショーツ(USネイビー ヴィンテージ) / アイウェア(素敵メガネMICHIO) / シューズ(JMウエストン)
取材中スタジオの隅っこのお気に入りスペースにてお利口さんで待機してくれていた田口家の愛犬ヒース。
田口家では早朝と夕方に家族で散歩に出かけるのが日課。葉山といえば海のイメージですが、
この日は山散歩のコースもオススメとのことで案内してくれました。
―本日はスミスのプロムナードコートを着用していただきましたがいかがですか?
ジャッキー: 私は岡山でキャリアをスタートしたことにも起因するのですが、ワークウェアの世界に足を踏み入れたことがある人間なので、生半可な気持ちで形だけのワークウェアブランドやワークっぽい雰囲気だけの洋服になかなか袖を通しにくい気持ちがあるのですが、スミスは歴史的に見ても由緒正しいブランドというか、ディテールワークなどをとってみても男心くすぐられるブランドだなと改めて思いました。60年代のデニムカバーオールをいまだに愛用しているのですが王道のアイテムから今日着ているコートのようにキャッチーなアイテムまで作っているところも好印象ですね。このコートはナイロン100 %でとても軽いのでストレスの無い生地感だし、家庭での洗濯も出来てしまう。それにすぐ乾くだろうからデリケートなアイテムじゃないから着る回数が自然と増えるだろうなと思います。しっかりとワークウェアの矜持を持ったアイテムですね。
緩やかな山道を15分ほど進むと美しい棚田が広がる風景もあり葉山の隠れた魅力が詰まっている。
―本日のコーディネートのポイントを教えてください。
ジャッキー: 私のファッション的な哲学として、ショーツに長袖って最強だと思っていて(笑)。丈の長いアイテムにショーツを合わせることで脚長効果を得られるのもあって昔からよくする合わせなんです。それに僕はナードなスタイルが好きなので、ハイウエストでシャツをパンツにインするスタイルなんかもよくしますし、今日みたいなコートに隠れる短い丈のショーツの合わせは一般的にはかなり「気持ち悪い」って言われちゃう合わせだと思いますが僕は人に好かれるコーディネートをそもそもするタイプでは無いのでめちゃくちゃ今日のコーディネートは気に入っているんですよね(笑)。
プロムナード(散歩)コートは収納量も抜群で、その名の通りペットボトルや犬用おやつなど、犬の散歩に必要なツールも安心して収納可能。
―最後に今後の”STUDIO JCP”の展望を聞かせてください。
ジャッキー: 私もまだ本当に悩んでいるんですが、このままスタッフを増やして大きい縫製工場にするっていうのが、どうしても嫌で(笑)。ゆくゆくは自社で企画して自社で作ったものを自社で売るっていうふうにしていかないとな~とは思っています。ただ”STUDIO JCP”で「ブランドを立ち上げました!」っていうようなことはしようとは思っていなくて、私たちにしか出来ないような、”STUDIO JCP”だからやる意味のあるプロダクトを開発できたらなと思っていて、それが何になるのかは現段階では色々と可能性を探っているという状況ですね。この先の目標としては、大好きなウォルト・ディズニーの言葉のエッセンスを少し拝借すると会社を大きくするっていうことではなく、居心地の良い会社でいるために色々なことに挑戦し変わり続けていけたらなと思っています。
田口 “Jackie” 岳佳 @thx.jackie
Piccoro社オフィサー / STUDIO JCPオーナー
様々なブランド、メーカーのプロダクトをサポートし、縁の下の力持ちポジションを確立。
これから縫製を生業にする方々へのコンサルティングと同時に、昨今では居住地の葉山の子どもたちに向けた地域サポートにも貢献。高齢化で衰退する衣料品製造業、技術職に歯止めをかける活動も精力的に取り組んでいる。週末はヴァイナルDJとしての顔も持ち、DJユニット”FM84.0”として様々なパーティーでグッドミュージックを届けている。
STUDIO JCP @studio_jcp