ERな人 VOL.5 NEEDLES DESIGNER 清水慶三

ERな人 VOL.5  株式会社ネペンテス 代表取締役/NEEDLES DESIGNER 清水慶三

photo / Takeki Yasuda edit / Koji Toyoda

 

1906年創業のアメリカンワークブランド〈SMITH’S〉。1960年代にメイド・イン・USA物の草分けとして日本流通するようになって半世紀。その魅力は決してリアルワーカーのためだけじゃない。様々な分野のエキスパートたちにその良さを語ってもらった。

 

Made in U.S.A. Catalog』で知った〈SMITH’S〉のペインターパンツ。

 

日本の若者たちにアメリカンカジュアルウェアの魅力を植え付け、未だに啓蒙し続ける渋谷のセレクトショップ『ネペンテス』。その代表の清水慶三さんは、メイド・イン・USAと名の付くものをはじめとし、ありとあらゆるものに目を通してきた。約30年以上もの間、幾度となくアメリカに足を運び続け、そこで蓄えた膨大な知識やセンスを武器に、〈NEEDLES〉を始め、〈ENGINEERED GARMENTS〉や〈SOUTH2 WEST8〉……、数々のブランドを“ネペンテス”の屋号の元に手掛けていくわけだが、その清水さんのルーツのひとつに〈SMITH’S〉のワークウェアの存在があったことはあまり知られていない。そして、一緒にものづくりをしてみたかったブランドだと言う。

 

「〈SMITH'S〉を初めて知ったのは、私が高校生のときでした。『Made in U.S.A. Catalog』(読売新聞社)に掲載されていたペインターパンツの写真を一目見て、他のワークウェアブランドには見られない、テーパードシルエット、ステッチワーク、尾錠などの洗練されたデザインに惹きつけられました」

 

だが、しかし。当時はそれを扱っているお店も限られていたからか、清水さんがその実物を手にするのは高校を卒業し、『文化服装学院』に通う19歳くらいの頃だった。

 

「実際には、自分に合ったサイズを手に入れることはできませんでした。というのも、当時の日本には32インチまでの小さなサイズしか輸入されておらず、34インチの私のサイズは市場になかったんです。仕方なく少しタイトなサイズで穿いていたのですが、結局やはり数回穿いただけになってしまいました。その後、念願のジャストサイズを手に入れることができたのは、アメリカの現地でしたね。1983年当時、働かせてもらっていたセレクトショップで、初めての海外買い付けを任されるようになりまして。ニューヨークへ行った際にいの一番で行った「ハドソンズ」や、ロングアイランド郊外のサープラスショップなどで〈SMITH’S〉をたくさん取り扱っているのを見掛けて、そこでようやく34インチを購入することができたんです」

 

今回のカプセルコレクションは、‘70年代の〈SMITH’S〉らしい発色のいいライトツイルコットンを使用。ホワイトにブラック、レッド、パープル、スカイブルー、オレンジの全6色展開。そのカラーリングを際立たせるかのように、コントラストステッチを効かせた凝った作りだ。写真のモデルのように躊躇せずセットアップで着てみるのがおすすめだ。ともに〈SMITH’S〉×〈NEEDLES〉のカバーオール¥26,400ペインターパンツ¥18,700

 

清水さん曰く、当時の〈SMITH'S〉は、ワークウェアと言えど、〈LEE〉や〈CARHARTT〉、〈OSHKOSH〉などに代表される無骨なアメリカンワークとは正反対のイメージだった。

 「どちらかと言えば、少し軟弱でマイナーで、典型的な日本のアメリカ物が愛する人たちにはあまり好まれていなかったと思います。でも、その反面、スノッブでチープシックなヨーロッパ物が好きな好事家たちの間では歓迎された存在で。そんなイメージもあったからか、私にとって〈SMITH’S〉は数あるワークウェアの中でも特別なものに思えたんです」

  ともに〈SMITH’S〉×〈NEEDLES〉のカバーオール¥26,400、ペインターパンツ¥18,700

 

SMITH’S〉の代表格と言ったら、誰が何と言おうとペインターパンツ。もちろん清水さんにとっても当時の隠れたマスターピースであったが、デニムという括りで言えば、カバーオールも思い入れの強いアイテムだった。

 「当時からデニムの代表的な存在は、5ポケットジーンズとGジャンでしたが、私はカバーオールとペインターパンツを好んで着ていました。ガッチリとした体型の私には、タイトなGジャン&ジーンズよりもこっちの方がしっくりときたんです。当時の〈SMITH’S〉のカバーオールはとくに着丈が長めで少し野暮ったく見えるせいか、好んで着ている人も少なかったので、天邪鬼な私にとって最高のデニムアイテムだったんです」

つまり、アメリカンワークウェアの裏街道をひっそりと、でも胸を張って歩いてきた〈SMITH’S〉は、一筋縄じゃいかぬアメカジを愛する清水さんと相性が良かったわけだ。だから、今回コラボレーションのオファーを頂いたときは、まさに「待っていました!」という気持ちが強かった。

 

「作りたかったのはもちろん、カバーオールとペインターパンツ。‘70年代のカラーツイルの生地にコントラストステッチを効かせた、私の中で一番〈SMITH'S〉らしいアレンジを、今の時代感に程よくブレンドしてみたつもりです。オーセンティックなアイテムではありありますが、その着こなし方にルールはありません。皆さんが自由気ままに、自分の好きなように着てもらえたら嬉しいです」

 ともに〈SMITH’S〉×〈NEEDLES〉のカバーオール¥26,400ペインターパンツ¥18,700
 

清水慶三

1958年、山梨県生まれ。文化服装学院卒業後、1988年にセレクトショップ『ネペンテス』を創業。1995年より自身のブランド〈ニードルズ〉を立ち上げる。2010年には〈リビルド バイ ニードルズ〉をスタート。趣味は、渓流釣り。

 

ネペンテス オフィシャルオンラインサイト

https://nepenthes.co.jp/

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